哺乳動物の免疫応答は2つのタイプつまり自然免疫と獲得免疫からなる。獲得免疫は、おもにT細胞やB細胞が関与し、DNA再構成により無数の特異性をもった受容体が作られ、あらゆる抗原を認識する、脊椎動物特異的に存在する高次の免疫システムである。一方、自然免疫は下等生物から高等生物まで共通に持つ基本的な免疫機構で、マクロファージ、白血球、樹状細胞などの食細胞が担当し、体内に侵入してきた病原体を貪食し分解する役割をもつ。これまで自然免疫は、非特異的な免疫反応と考えられ、哺乳動物においては獲得免疫の成立までの一時しのぎと考えられてきた。しかし、最近、Toll-like-receptors(TLRs)を介して、自然免疫系の細胞も、病原体を極めて特異的に認識して早期に病原体の侵入を察知し、炎症・免疫応答をひきおこすことが判明した。TLRは、細菌、真菌、原虫、ウイルス由来の成分によって活性化され、あらゆる病原体の体内への侵入を感知する受容体であることが判明している。さらに、最近になり、TLR以外に細胞質内に病原体の侵入を感知する受容体の存在があきらかになってきた。このように、TLRと細胞質内センサーの両方を用いて、われわれの体は病原体の侵入に備えている。ここでは、ウイルス認識に関わる受容体に焦点をあて、最近の進歩について概観してみたい。