研究成果

業績資料(高田)

Kuroda M, Fujikura D, Noyori O, Kajihara M, Maruyama J, Miyamoto H, Yoshida R, Takada A. A polymorphism of the TIM-1 IgV domain: Implications for the susceptibility to filovirus infection. Biochem. Biophys. Res. Commun. 455(3-4):223-228, 2014.

概要

フィロウイルス科に属するエボラウイルス及びマールブルグウイルスはヒトを含む霊長類に感染し、重篤な出血熱を引き起こす病原体として知られている。これまでに、フィロウイルスの細胞への吸着及び膜融合に関与する様々な宿主分子が報告されている一方、その分子メカニズムには不明な点が多い。その中で、T cell immunoglobulin and Mucin domain 1(TIM-1)は細胞外領域に機能ドメインであるIgVをもつI型の膜タンパク質であり、フィロウイルスの細胞への吸着に関与する分子として知られている。本研究では、フィロウイルス感受性に対するTIM-1多型の影響について解析した。フィロウイルスの感染実験には複数のアフリカミドリザル腎臓上皮由来の細胞株(Vero E6、COS-1、BSC-1等)が用いられているが、これらの細胞のTIM-1のアミノ酸配列を比較した結果、Vero E6は他の細胞株とはアミノ酸配列が数ヶ所異なることが分かった。次に、それぞれのTIM-1を安定に発現する細胞を作製し、VSVシュードタイプウイルスに対する細胞の感受性を比較したところ、Vero E6由来TIM-1発現細胞のウイルス感受性は他の細胞由来TIM-1発現細胞よりも有意に高かった。IgVドメインのアミノ酸配列を比較すると、48番目のアミノ酸(Vero E6:アスパラギン、COS-1, BSC-1:ヒスチジン)が異なっていた。この48番目のアミノ酸を相互に置換したTIM-1を作製し、野生型及び変異型TIM-1を発現する細胞間でのウイルス感受性を比較した。その結果、異なるTIM-1を持つ細胞間でみられた感受性の違いがこのIgVドメイン中の1アミノ酸の違いに依存することが分かった。この48番目のアミノ酸の違いによる細胞の感受性の変化はフィロウイルス科の全てのウイルス属において認められた。以上より、TIM-1の多型がフィロウイルス感受性を左右する要因の一つであることが示唆された。