研究成果

発表論文報告(高田)

概要

T-cell immunoglobulin and Mucin domain 1(TIM-1)に対するモノクローナル抗体M224/1は、フィロウイルスに対して高い感受性を示すアフリカミドリザル腎臓上皮細胞Vero E6を抗原としてマウスを免疫して得られた抗体であり、フィロウイルスの細胞侵入過程を阻害する。M224/1存在下及び非存在下で、蛍光標識したエボラウイルス様粒子(VLP)の吸着・取り込み・膜融合を定量的に比較解析した結果、M224/1存在下でのVLPの細胞への吸着阻害効果は僅かであるが、VLPとエンドソーム膜との膜融合が著しく阻害されることが明らかとなった。そこで、フィロウイルスの膜融合に必須である宿主分子Niemann-Pick C1(NPC1)とTIM-1のVero E6細胞内局在を観察したところ、核近傍に集積する細胞内小胞において両者の共局在が認められた。さらに、293T細胞での過剰発現系を用いた免疫沈降法および蛍光タンパク質再構成法により、TIM-1とNPC1が結合することが確認された。また、細胞内のTIM-1/NPC1複合体と膜融合を起こしているVLPの局在は一致した。興味深いことに、M224/1はTIM-1/NPC1複合体形成を抑制した。以上の結果より、フィロウイルスはTIM-1を介して細胞表面に吸着した後、TIM-1と共に細胞内に取り込まれ、後期エンドソーム/リソソームにおいて、TIM-1とNPC1との相互作用を経て膜融合を行い、細胞内に侵入することが示唆された。