新規な多細胞性の細菌についての共同研究です。この細菌は光を通すと虹色に見えるコロニーを作り、その内部に水流に触れると放出される細胞を溜め込みます。単細胞が多細胞に移行する際にどのように選択圧が働き遺伝的性質として固定されるのかという謎に対する重要な意味を議論しています。

メチシリン耐性遺伝子を含むカセット染色体SCCが自然形質転換で伝達することを示しました。しかし実はまだ説明できていないことも多く研究を継続しています。

相変異（Phase variation）は、高頻度に切り替わる可逆的な遺伝子発現スイッチ（の結果として生じる表現型の変換）としてよく知られた現象です。 相変異は遺伝的またはエピジェネティックなメカニズムで生じ、感染した宿主内での適応戦略や、バクテリオファージ（細菌に感染するウイルス）からの感染に対する戦略によく見られます。このレビューでは、細菌のPVを生成するメカニズムを概説し、黄色ブドウ球菌における相変異の初期および最近の発見（我々が見出したAgr相変異や、SigHの相変異様メカニズムを含む）をまとめました。また、PVはもっと様々な遺伝子で起こっている可能性があることについても述べています。
関連して我々は集団内の個々の多様性（population heterogeneity）、特に量的ではなく質的な多様性、に基づく未知の細菌戦略の解明を目指した研究を進めています。

日和見病原体としての黄色ブドウ球菌の進化的成功は、様々なストレスや宿主の殺菌因子に対処する能力によるところが大きい。活性酸素種は、貪食（ファゴサイトーシス）された病原体を不活化する宿主の重要な武器ですが、黄色ブドウ球菌はファゴソームで生き残り、貪食細胞から抜け出して感染を成立することができます（これが慢性的感染、または再発の原因の一つとして考えられます）。このレビューは、酸化ストレス下のブドウ球菌核様体ダイナミクスに関する知見を解説しています。原子間力顕微鏡と分子遺伝学的解析により、MrgAタンパク質（Dpsファミリータンパク質）が酸化ストレスに応答して特異的に誘導され、核様体を通常のファイバー状から凝集状態に変換することが明らかになりました。これは、大腸菌が定常期にDpsによって凝集させる核様体とは機能的および物理的に全く異なる状態であることも示されています。さらに、ブドウ球菌のライフサイクルにおける核様体凝集の新しい役割として「ゲノム複製起点周辺の遺伝子発現制御」の可能性を提案しています。
これはまだ仮説段階ですが、現在は我々が独自に開発してきた黄色ブドウ球菌の自然形質転換法を応用した証明に取り組んでいます。