メッセージ

この研究室では様々な腎臓病の発症と進展についてユニークな研究しています。
また、腎生検病理診断の質の向上を目指した様々な活動をしています。

分からないことを理解できるようになりたいと思うこと、それに対して方略を考えて努力すること、そしてその成果が評価されること、これが研究を続けていくうえでの大切な要素だと思います。この過程を楽しみ、成果を社会に問うという作業のドライブに、イメージをもつことは必要です。

病理学あるいは形態学はカタチから情報を収集するというアナログ的な作業ですが、病変から抽出する情報の質を高めるためには、経験と論理的に考える習慣に加えて、イメージを抱く感性と科学的なセンスも大切な素養です。これらの素養は、ジャーナルクラブやグループディスカッションにより高められると考えていますし、科学的センスはある程度努力によってカバーできると思います。それを育むのに、それぞれのラボメンバーがコミュニケーションをよくとって理解しあい、助け合うということも大切だということを、私はこれまでのラボメンバーから学びました。

研究の目的は、もちろんその成果が社会の役に立つことが第一ですが、研究を通して合理的に考えたり、科学的に検証することの必要性を学んだり、社会に発信すべくプレゼンテーションのスキルなども、研究を通して得られるかけがえのないものです。

この研究室では、腎臓病の研究をしています。どうして腎臓病になるのかという原因論ももちろん重要ですが、同時にどうして腎臓の機能が悪くなるのか?どうして進行してしまうのか?という病態論も、病気を理解する大きな根拠となります。臓器の機能低下は形態で捉えられ、形態の中に病態の理解に意義のある新しいルールがあるものと信じて、イメージを大切に形態から機能を考えていきます。病気の本質を捉える病理学的研究は、私たちの場合、実際のヒトの腎生検材料や遺伝子操作動物モデル、さらには培養細胞を使ってマクロからミクロへ、ミクロから分子へ、分子から個体へと、常に関連付けながら進めていきます。この手法は、病理学あるいは形態学の基本であり、可視化の技術を駆使しながら、ゆっくりと、しかし確実に真実に迫っていくというスリリングな作業です。
もちろん、予測のできる答えは用意されていません。

私は、研究を始めてから、ヒトが物事を考えるということはどういうことなのか、少しずつ分かり、またできるようになってきました。私たちの研究が腎臓学に更に寄与するために、考えるという過程を若くて個性のある人たちと共有したいと思っています。