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脳梗塞の原因となる可能性のある卵円孔開存: (PFO)に対する経カテーテル的デバイス閉鎖治療

【担当医師】
石津 智子町野 智子川松 直人

卵円孔開存とは

心臓の左右の心房の間の心房中隔に胎児期に開いている卵円孔は、右心房から左心房へ酸素を送り込む役割を果たします。通常であればPFOは生後自然に閉じます。ただし健康な方でも4人に1人は空いたままになっているといわれています。
通常は症状もなく、治療の必要もないとされていますが、まれに卵円孔が閉じずに開存しているために右心房から左心房に血液が直接流れ込み、その血流にのった血栓(=血のかたまり)が卵円孔を通過し脳に達することで脳梗塞の原因になるといわれています。

脳梗塞の原因(卵円孔開存の検査方法)

脳梗塞の原因を調べるためには以下のような検査を行います。
原因を適切に診断することによって、それぞれの患者さんに合った再発予防治療を行うことができます。

頭部MRI・頭部CT

心電図

心エコー

血液検査

脳梗塞は血管が詰まった原因によって、主に3種類に分類されます。

アテローム血栓性脳梗塞

脳の太い血管で血管の壁が厚くなったり、そこに血のかたまり(=血栓)ができて血流が悪くなります。
加齢や高血圧、コレステロールが高いことや糖尿病、喫煙などが原因になるといわれています。

ラクナ梗塞

脳の細い血管で血管の壁が厚くなったり、そこに血栓ができて血流が悪くなります。
加齢や高血圧、糖尿病などが原因になるといわれています。

心原性脳塞栓症

主に心臓の拍動が不規則になることで心臓内に血栓ができ、それが血流と共に脳内の血管まで飛んでいき、脳の血流を障害します。


その他の脳梗塞

上記3つの分類に当てはまらない特殊な原因による脳梗塞もあります。
その中の1つが、卵円孔開存(PFO)による脳梗塞です。

卵円孔開存に対する治療

卵円孔開存(PFO)が関与したと考えられる脳梗塞の再発予防として、カテーテルを用いて「AMPLATZER™ PFOオクルーダー」を心臓内に留置することで卵円孔開存(PFO)を閉鎖し、脳梗塞の再発を予防する治療です。
足の付け根からカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し心臓まで進めます。
治療はカテーテルを介して行われるため開胸することなく治療が行えるため低侵襲ですみます。
治療の手順は以下の通りです。治療は平均1.5時間程度かかります。
平均入院期間は約5日程度になります。

1. 大腿静脈よりデリバリーシースを挿入して、右心房側よりPFOを通し左心房側に近づけます。

2. 左心房にあるカテーテルの先端までオクルーダーを進めて、左心房側のディスクを傘のように開きます。

3. 左心房側のディスクを心房中隔に近づけます。

4. 右心房側のディスクを傘のように開きます。

4. 右心房側のディスクを傘のように開きます。

5. オクルーダーとケーブルとの接続を解除して、オクルーダー本体のみを心臓の中に留置します。

治療のアニメーション動画

アボットメディカルジャパン画像・動画提供

カテーテルによるPFO閉鎖治療の合併症

閉鎖栓の脱落

心浸食
(erosion)

欠損の閉鎖不全
(残存短絡)

カテーテルによる
心臓や血管の損傷

経食道心エコーによる
食道の損傷

不整脈

脳梗塞

感染症

造影剤アレルギー

頭痛、片頭痛

その他

他の治療方法

外科手術:全身麻酔、人工心肺を用いて手術を行う方法です。欠損部位はパッチ(繊維布)を用いて縫合するか、小さい場合にはパッチを用いずに直接縫合します。現在では手術死亡率も低く、確立された治療となります。カテーテル治療では難しい場合にも手術では直視下に確実に治療可能です。欠点としては、入院期間が長くなること、胸に傷跡が残ることがあります。

当院の成績

当院では2020年4月から治療を開始しました。2022年12月までに同様の治療である心房中隔欠損閉鎖術と合わせて114例のカテーテル治療を行い、良好な成績を得ています。

 成功率 100% (114例中114例成功)
 合併症 0%(脱落 0%, 心浸食の発生 0%, その他の合併症 0%)

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