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お知らせ

2023.08.25

秋山先生、貞廣先生が、 肺高血圧症の血管リモデリング増悪におけるVEGF受容体の役割に関する研究論文を『Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology』に発表

診断および治療法の進歩により、肺動脈性肺高血圧症の予後は大きく改善されていますが、血管のリモデリングが進行した患者様では、依然として予後が不良であり、肺血管リモデリングの分子生物学的機序を解明し、この病変を改善させる新たな治療法の開発が熱望されています。肺高血圧症患者様の肺では血管増殖因子のVEGFと、その受容体であるFlk1の発現が上昇していることが知られていましたが、その役割が疾患促進的なのか、保護的なのかは明らかではありませんでした。
そこで我々は、筑波大学呼吸器内科大学院生の秋山達也先生と共に、複数の遺伝子組換マウスを使って、Flk1が肺の細動脈~毛細血管レベルの末梢の血管内皮細胞を中心に発現していることを明らかにし、低酸素下でその発現が上昇することを示しました。さらに、血管内皮細胞特異的にFlk1を欠損させたマウスでは、低酸素による肺高血圧症が増悪し、従来のマウスモデルでは認めることのない内膜病変を伴う重症血管リモデリング病変が出現していることを発見しました。さらにその機序として、Flk1欠損と低酸素という”2ヒット”が相乗的に作用し、肺血管内皮細胞では細胞周期や細胞老化、アポトーシスなど複数の経路の異常が出現し、疾患の増悪に関与していることを明らかにしました。

本研究で、肺高血圧症の血管リモデリング増悪には、低酸素とFlk1欠損に伴う相乗的な作用が関与していることを明らかにしました。今後、この新たな疾患増悪機構を標的とした新たな治療法開発への応用が期待できます。今回の研究成果は、2023年8月3日に国際科学雑誌『Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology』に発表されました。

Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology誌
doi.org/10.1161/ATVBAHA.123.319266

図:低酸素と、Flk1欠損が相乗的に作用する肺高血圧症における血管リモデリング過程

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