小児・先天性心疾患の外科治療(担当医:平松祐司、松崎美緒)



 

本院における小児心臓手術の現況と目的

茨城県南部を中心に据えた広域医療圏に高水準の小児心臓外科治療を提供することを目的とし、“正確な診断にもとづき、適切な時期に的確な手術をおこなうこと”をモットーとしています。フィラデルフィア小児病院(The Children’s Hospital of Philadelphia, USA)の技術と理論を、手術手技、手術関連システムに生かしています。小児循環器科、麻酔科および集中治療部との連携のもと、担当心臓外科専門医2名と研修医(レジデント)、人工心肺を担当する臨床工学士および心臓外科手術看護師が手術チームを形成し、年間約60-70例の小児心臓外科手術をおこなっています。

軽症例から複雑疾患まで、あらゆる病態に対応しています。安全性の高い手術である学童期の心房中隔欠損症では、最近5年以上にわたって、安全率、無輸血率とも100%を維持しています。乳幼児期に手術をおこなうことの多い心室中隔欠損症手術の危険率も非常に低くなっています。Fallot四徴症では、遠隔期の右心室および三尖弁機能維持に配慮した術式を採用し、約半数は無輸血で終了しています。単心室症、無脾症候群などの複雑心疾患に対するBidirectional Glenn手術、Fontan型手術(TCPC)や、新生児、乳児期早期の総肺静脈還流異常症、大血管転位症などの重症心疾患に関しても、安定した手術成績を得ています。これらの複雑心疾患では、2度ないしは3度にわたる段階的な手術を計画しなければならないことが多々あり、長年にわたって困難な治療を乗りこえていかなければなりません。ご本人、ご家族はもとより、治療にあたるわれわれにとっても根気のいることですが、小児科と綿密な連携をとりながら、より確かな可能性を求めて丹念に治療を積み重ねることが大切だと思っています。

近年の日本胸部外科学会の統計では、国内の先天性心疾患の総手術死亡率は約5%以下と報告され、当院における小児心臓手術の年間総死亡率も同等です(20051.6%)。技術、理論の進歩により年々その安全率は向上していますが、ひとつひとつの手術で120%の安全性を目指すことが重要で、安全率という数字はその結果の積み重ねに過ぎません。安全を基礎として、将来できる限り通常に近い学校生活、社会生活を営むことを最終のゴールに据え、ハードルを着実に乗り越えていくための治療体系を、疾患、個人に応じて考慮しています。こどもたちに最善の外科治療をおこない、元気にご両親のもとへお返しすることが、われわれの目的と誇りです。

 大切なお子さんの心臓手術を考えるにあたっては、多くの不安や疑問を抱かれることと思います。外科治療の意義と目的を正確にご理解いただくとともに、最善の治療法をご選択いただけるように、手術に先立って十分なご説明を差し上げます。電話、メールでのお問い合わせにも応じておりますので、手術に関するご質問があればお気軽にお寄せください。手術を受けたあとのご感想、ご意見などもお聞かせ下されば、今後の医療に生かしていきたいと思います。(問い合わせ先;循環器外科秘書029-853-3097,  ms02k317@md.tsukuba.ac.jp
平松祐司 
029-853-3210, yuji3@md.tsukuba.ac.jp

 

1.当科における小児心臓手術の実際―――“より侵襲の少ない手術を目指して”

人工心肺(体外循環)について

小児無輸血開心術について

MUF: Modified Ultrafiltration(人工心肺後の急速血液濾過)について

低侵襲心臓手術・小皮膚切開心臓手術 (MICS: Minimally Invasive Cardiac Surgery)について

 
2.小児心臓手術後―――集中治療室から退院まで

 
3.新しい修復技術の導入

心臓外科において修復技術は日々進歩を遂げていますが、新しい技術の導入にあたっては、確かな技術と理論の裏打ちが欠かせません。当科においても、近年、いくつかの新しい修復技術を導入していますが、その安全性、有効性については厳密な吟味を重ね、慎重に適応を判断し、十分な情報提供をおこなっています。

    ・心室中隔欠損の連続縫合閉鎖法

   ・自己弁温存あるいは自己心膜による大動脈弁形成術 (Leaflet extension法)

 

4.退院後の診療、成育医療について

退院後は定期的に外来に通っていただきますが、その頻度は疾患、状況によりまちまちです。根治手術後は半年から数年以内に内服不要となることも多く、5年以上の遠隔期には外来通院不要となることもあります。内服薬、特に抗凝固薬(人工弁、人工血管などに対する抗血栓療法)を厳密にコントロールする場合には、おおむね月に一度の外来通院が継続されます。重症、複雑疾患では小児循環器科と連携しながら治療および検査計画を立て、必要に応じて追加治療、カテーテル検査などをおこないます。お子さんの成長にともなって、特に思春期以降の社会性が広がっていく時期に生じる様々な問題に対しても、循環器内科をはじめ大学病院内の各科専門医と共同して解決にあたっていきます。年齢を区切ることなく、先天性の心臓病を持つお子さんに対して生涯にわたる継続的な成育医療をおしすすめています。




5.小児循環器疾患、小児心臓外科に関する基礎研究

 

 人工心肺の安全性を高め、心臓外科手術の侵襲を少なくすることを目的として、当科では、人工心肺中の血液成分の活性化を薬理学的に制御する“血液麻酔”の基礎研究を臨床医学系研究室においておこなっています。現在は、炎症機転の首座であると考えられる白血球(好中球)および白血球由来の蛋白分解酵素の活性化制御を目指した研究を進めています。

 また、チアノーゼ性心疾患の血液凝固異常に関する基礎研究を、小児循環器科と共同でおこなっています。多血症では出血性の合併症を生じやすい経験から、多血と特定の凝固因子活性化との関連、あるいは凝固・線溶系の過剰反応の存在に焦点を当てています。これらの基礎研究の成果は、将来の小児循環器治療の発展に寄与するものと考えています。詳しい研究内容、資料等については、当ホームページの研究欄をご参照ください。

(小児心臓外科治療に関するご相談、お問い合わせは、循環器外科秘書029-853-3097,  ms02k317@md.tsukuba.ac.jpまたは平松祐司0298-53-3210, yuji3@md.tsukuba.ac.jpまでご遠慮なくお寄せください。当院受診の有無にかかわらず、先天性心疾患の外科治療に関する一般的なご相談にも応じております。外来受診予約は、筑波大学附属病院予約センター;029-853-3570へお願いします。 2006年2月更新