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研究テーマ

抗がんナノ粒子グループ



研究テーマ : 抗がんナノ粒子を使った電磁誘導加熱抗がん治療

【研究の概要】

 進行・難治癌に対する、画期的な治療法の開発が求められる中、磁性ナノ粒子をがん病巣にのみに集め、体外から交流磁場を印加して加熱、殺傷する電磁誘導加熱癌治療に注目しています。今までは、i)癌細胞に集められる磁性ナノ粒子の総数が少ない、ii)1個1個の磁性ナノ粒子の発熱量が小さい、という2つの技術的な制約から、癌病巣を十分高温にする事が出来ず、臨床応用は出来ていませんでした。私たちの研究室では1)抗がんナノ粒子の選択、開発 2)電磁誘導加熱装置の開発 3)ナノ粒子の腫瘍集積法の開発 を総合的に推し進める事により、電磁誘導加熱癌治療の実現を目指しています。

 

【研究1:熱焼灼治療に必要な熱量は?現代の技術で達成可能?】

 癌細胞を殺傷する効果として“熱”は最も確実なツールです。磁性ナノ粒子を使った焼灼治療に於いて、「一体どれだけの発熱量を持ったナノ粒子を、どれだけ腫瘍に集めたらがんは治せるのか?」という数値目標が今までは明確ではありませんでした。小さな腫瘍の方が熱拡散の影響を受けやすく、電磁誘導加熱では焼けにくいとう物理現象は医学研究者には一見意外な事です。産業技術総合研究所と共同で解析を進めた結果、肝臓の中に存在する直径1cmの腫瘍を50℃に熱する為に必要な熱エネルギーは1.7W/g腫瘍ですが(A)、同じ熱量では直径0.5cmの腫瘍は41℃にしかならず(B)、50℃にする為には5.1W/g腫瘍と3倍の熱量が必要である事を明らかにしました。この目標値は現存技術で提供できる熱量の約100倍も高く、それを叶えるハードルは決して低くありません。

Yamada K, Oda T, Hashimoto S, Enomoto T, Ohkohchi N et al. Minimally required heat doses for various tumor sizes in induction heating cancer therapy determined by computer simulation using experimental data. International Journal of Hyperthermia. 26(5);465-474. 2010

 

【研究2:新規磁性ナノ粒子を開発し、いままでの15倍の発熱量を達成しました。】

 1個1個の磁性ナノ粒子の発熱量は、磁性ナノ粒子の物性と磁場発生装置の強さによって決まります。日本は磁気テープ開発、製造で世界の断然トップを走る技術力を持ち、磁性ナノ粒子の開発はお家芸です。筑波大学磁性工学研究室、磁気テープメーカーとの共同研究で独自の医療用磁性ナノ粒子を開発しました。交流磁場発生装置の強化と合わせて、総合的に450W/g材料鉄という今までの15倍の発熱量を達成しています。この粒子をマウスの腫瘍に直接注入して磁場をかけると腫瘍を完全に消失させる事が出来ました。この粒子、装置の開発で600-800 W/g材料鉄という今までの20倍の熱量を提供する事は可能だと試算しています。

  1. Hashimoto S, Oda T, Ohkohchi N et al. Development of new thermo-ablation therapy using new magnetic nanoparticles and alternating magnetic field device BioNanotech 2010 (2010-June Anaheim, USAにて発表, manuscript in preparation)
  2. Kita E, Oda T, Ohkohchi N et al. Heating characteristics of ferromagnetic iron oxide nano-particles formagnetic hyperthermia Journal of Applied Physics. 107;09B321. 2010
  3. Hashimoto S, Oda T, Ohkohchi N et al. The measurement of small magnetic signals from magnetic nanoparticles attached to the cell surface and surrounding living cells using a general-purpose SQUID magnetometer. Phys Med Biol 54: 2571-83. 2009

 

【研究3:マクロファージを抑制する事により、ナノ粒子の腫瘍分布を高める事を目指しています】

 目標の100倍の熱量を達成する為のあと5倍は、生物学的な腫瘍集積量を上げる事により達成しようと考えています。抗がんナノ粒子、リポソーム等は3-200nm程度の大きさを持ち、一般の低分子の薬剤とは全く異なった薬剤分布を示します。肝臓のKupffer細胞あるいは遊離マクロファージなどの細網内皮系に捕捉されてしまい、血中に循環する粒子数が下がり、ひいては腫瘍への分布が不十分になる事が問題です。その対応として、今までは治療担体をPEG等で修飾し“ステルス化”する事で細網内皮系による捕捉を回避しようという工夫が行われてきました。それに加えて、我々は患者の細網内皮系を一時的に抑制することによっても、抗がん治療担体の腫瘍への集積量を高める事が出来るのではないかと発案し研究を進めています。既に、ビスフォスフォネート製剤であるclodoronateをリポソーム化して投与するとマクロファージ、肝Kupffer細胞を一時的に除去する事が可能である事を利用し、ナノ製剤の効率的な腫瘍送達を確立しています。