医療機関の皆様へ

対象疾患

概略


 私ども筑波大学消化器外科グループは消化管(食道、胃、大腸)、肝胆膵の広範な疾患に対して、手術を中心とした集学的治療を行っております。臓器別にスタッフを配置し、トップレベルの医療を提供するべく診療にまい進しております。手術が治療の中心となる事から消化器の悪性疾患が対象疾患の大部分を占めますが、炎症性腸疾患、肝臓移植、胆石症なども積極的に治療しています。

当科で行った手術件数

臓器 手術 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
食道 食道手術 13 17 23 25 21
その他 3 5 0 12 8
幽門側胃切除・幽門保存胃切除 開腹 31 28 38 24 12
腹腔鏡 0 0 10 21 21
噴門側胃切除 3 3 5 7 5
胃全摘(残胃全摘) 10 24 18 15 13
腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS) 0 0 0 4 5
その他 2 8 8 11 7

大腸

小腸

小腸切除 開腹 5 5 6 10 5
腹腔鏡 0 2 0 3 1
結腸癌手術 開腹 32 29 39 17 17
腹腔鏡 1 12 25 42 45
直腸癌手術 開腹 16 24 10 21 16
腹腔鏡 0 5 9 18 27
炎症性腸疾患 開腹 6 3 4 3 6
腹腔鏡 1 1 0 2 0
その他 19 34 30 41 51
肝臓 肝切除 開腹 27 28 47 48 40
腹腔鏡 0 0 0 1 15
その他 2 1 7 4 6
胆道 膵頭十二指腸切除術 7 3 13 12 8
肝門部胆管癌手術 3 1 7 4 1
胆嚢癌手術 7 4 3 5 5
その他(悪性) 3 1 5 0 1
胆嚢摘出(良性) 開腹 8 8 5 14 10
腹腔鏡 16 20 23 23 28
胆管切開 2 1 4 2 1
その他(良性) 3 3 2 3 1
膵臓 膵頭十二指腸切除 21 17 25 16 13
膵体尾部切除 開腹 13 6 9 13 9
腹腔鏡 0 0 0 0 1
その他 11 4 4 7 7
脾臓 脾臓摘出 開腹 6 3 2 1 0
腹腔鏡 0 1 5 1 4
移植 肝移植ドナー 2 0 0 1 0
腎移植 2 1 3 3 10
その他 鼠径ヘルニア 22 16 28 34 28
虫垂炎 開腹 5 8 8 6 13
腹腔鏡 0 0 0 2 1
痔・痔瘻 5 2 2 8 2
その他 50 61 57 63 94
合 計 357 389 484 547 568

 

食道

寺島秀夫,久倉勝治,小川光一 が中心に担当しております。

 高度先進医療機関の食道外科として,特殊な疾患も含め,外科治療が必要となる“すべての食道疾患”に対して万全の手術が実施できる体制を整えております.取り分け,食道癌の集学的治療に力を注いでおります.

(1) 手術単独治療により治癒可能な症例を正確に選別し,科学的根拠にもとに手術単独で治癒に導く

 私どもの指針として,リンパ節転移個数5個以内であることを手術治療の対象にしてきました.私どもの食道癌治療戦略と成績を示します.

 抗癌剤や放射線による後療法を受けることなる手術単独で治癒できれば,患者さんにとっては最良の治療となります.

(2) 嚥下機能と自律神経を温存した独自の術式により術後の回復を著しく促進

 生理機能の温存(特に嚥下機能)・安全性・根治性の3条件を満たす手術方法を独自に考案し,実践しています。その結果,術前合併症のない症例の術後在院日数は平均9日となり,世界最速の術後回復を達成しています.

(3) Systemic diseaseに移行した食道癌に対する集学的治療

 術後回復が迅速であるという最大のadvantageを生かし,手術を先行し,一旦退院(術後10日以内)とし,退院後3週目から化学放射線療法“CRT”を開始する集学的治療法に着手しております.患者さんの負担を大幅に軽減した手術とCRTの相乗効果が大いに期待されます.

(4) 化学放射線療法“CRT”とリンパ節郭清を組み合わせることにより治療効果を補完

 治療前の評価により,CRTに抵抗性と推定されるリンパ節転移が存在する場合,リンパ節郭清により治療抵抗性の病変を予め除去した後に,根治的CRTを施行することで食道癌を高い確率で根治に導くことが可能となっています.

 無論のこと,食道粘膜下腫瘍,アカラシア,食道裂孔ヘルニア,腐食性食道炎などの食道疾患全般に対しても,専門施設ならではの外科治療を積極的に行っています.

 

明石 義正,小川光一 が中心に担当しております。

  • 積極的に取り組んでいる膵疾患:
     胃癌、GIST等の胃腫瘍
  • 当科ではあまり治療していない膵疾患:
     胃炎、胃潰瘍など薬での治療を優先する疾患

 胃癌の治療成績は向上しているものの、現在でも毎年10万人が罹患し、5万人が死亡する疾患であり、早急な対策が必要とされております。最近では抗癌剤の進歩も著しく、大規模臨床試験などでも、胃癌治療は手術と抗癌剤による集学的な治療が必要不可欠とされていることが分かります。当科では根治可能な患者さんには、QOLの低下が少ない最善の手術を心がけ、鏡視下手術の導入も行いました。また、追加の治療が必要な患者さんには、腫瘍内科と連携しながら、術前化学療法の後、根治手術を施行したり、術後に化学療法が必要な場合には、後治療に支障のない手術を提供したりしております。様々な治療に関しては、腫瘍内科、放射線科、病理科と合同で毎週カンファレンスを開催し、検討を重ね、治療を行っております。また、大学病院という性質上、併存疾患が多々ある患者さんも多く、そのような患者さまに対する根治手術や、治癒の望めない有症状の患者さんに対する姑息的手術なども積極的に施行しております。
 胃疾患につきまして、何でも結構ですので、お気軽にご相談いただけましたら幸甚です。

 

大腸・小腸・肛門

榎本剛史,大原佑介 が中心に担当しております。

  • 積極的に取り組んでいる疾患:
     大腸癌、直腸癌、炎症性腸疾患
  • 当科ではあまり治療していない疾患:
     痔ろう、直腸脱
当科における大腸癌に対する治療方針

Stage 0 消化器内科の医師と相談して内視鏡的な切除を行います
Stage I 手術を行います。盲腸から上行結腸、S状結腸から上部直腸の癌に関しては腹腔鏡手術の適応としています
Stage II~III 手術を行います。基本的に開腹手術の適応としています
Stage IV 肝臓の転移が手術可能であれば、大腸癌と同時切除を行います。消化器内科、放射線科の医師と相談して集学的な治療を行います

手術後の抗癌剤治療

Stage 0~II 基本的には抗癌剤治療を行いません。
Stage III 内服の抗癌剤治療を行います。
Stage IV 消化器内科の医師と相談して点滴抗癌剤の治療を行います。

 現在,当院消化器外科では,平均して年間に大腸癌の手術を70例程度行なっております。2003年から2009年までの364症例を大腸の病期(Stage)ごとにまとめたグラフをお示しします。

当科の直腸癌治療の特色

 下部直腸癌の局所進行癌に対して、経口抗癌剤の内服と約5週間の放射線照射を行う術前化学放射線療法を導入し,機能温存や治療成績の向上に関して良好な成績が得られております。
 また専門外来として、人工肛門や人工膀胱(小児含む)を造設された方を対象としたストーマ外来も行っており、専任の皮膚排泄ケア認定看護師も配置しております(毎週金曜日)。当院で造設された方のみならず、門戸を大きく広げておりますので、人工肛門関係でお困りの場合はご連絡ください。

炎症性腸疾患

 当科では年間平均して20例ほど炎症性腸疾患の手術を行っております。消化器内科と連携して診療に当たっております。

内痔核

 最近は硬化療法(三菱ウェルファーマ:ジオン注)が主流になりつつあり、当科でも硬化療法を行っております。

 

肝臓

大河内信弘,倉田昌直,高野恵輔,高橋一広 が中心に担当しております。

  • 積極的に取り組んでいる肝疾患
     肝細胞癌、大腸癌肝転移、その他の肝腫瘍、肝膿瘍、肝内結石症
  • 当科ではあまり治療していない肝疾患
    急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、門脈圧亢進症

 当科の過去6年間(2004〜2009年)の肝切除術数は合計で248例であり、疾患別では肝細胞癌91例、転移性肝癌87例です。肝細胞癌の治療方針は基本的に肝癌診療ガイドラインに従っています。患者さんに各治療法の詳細を伝え、十分な時間をとって話し合います。そして、ラジオ波焼灼術を選択された場合は消化器内科に、肝動脈化学塞栓療法は放射線科に依頼します。また、筑波大学には陽子線治療施設があり、治療の選択肢の一つです。肝細胞癌切除術後の術後在院日数は中央値13日(7-134)、術後在院死亡率2.2%(2名/91名/6年)です。大腸癌肝転移に関しては可能な限り切除を考慮しております。門脈右枝の塞栓術を併用することもあります。切除の適応とならなかった場合は化学療法となりますが、腫瘍内科医が所属する消化器内科へ依頼し、より専門的な治療を受けて頂く事ができます。

 

胆道

倉田昌直,橋本真治 が中心に担当しております。

  • 積極的に取り組んでいる疾患:
     胆道がん(胆嚢がん、胆管がん、ファーター乳頭部がん)、肝内胆管がん(肝門部胆管がん)、胆のう結石、総胆管結石、胆のう腺筋症
  • 当科ではあまり治療していない疾患:
     胆道ジスキネジー

 画像診断モダリテイーの進歩と手術手技、周術期管理の向上により、ゆっくりと、かつ大きく胆道癌の診断治療体系が変わりつつあります。以前は、閉塞性黄疸の患者さんには、まず(内視鏡的)胆道ドレナージを行うことが多く見られました。ご存じのとおり、現在では減黄前にマルチスライスCTスキャンとMRIを撮影し正確な進展度診断を行っています。また減黄方法も、以前は手術患者さんのほとんどは経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)を行っていましたが、現在では内視鏡的胆道ドレナージ(ENBD)が第一選択としてコンセンサスが得られています。閉塞性黄疸の患者さんが来院されましたら、精査前で結構ですので、すぐに遠慮なく当科へご紹介を頂ければ幸いです。
 当院では、検査の結果を放射線診断医、消化器内科医、さらに病理医と毎週、緊密な会議を開催して、全ての胆道がん患者さんの進展度診断と治療方針を議論して決定しています。胆道がんの手術は、腫瘍の存在部位により選択されます。特に肝門部胆管癌では肝臓も含めた広範囲な切除が必要とされ、難易度が高い手術が必要となります。逆に腫瘍のできる部位が十二指腸側である場合は、膵頭十二指腸切除が適応となります。当科では肝胆膵外科を専門にしている常勤医が計5人揃っており県内でも有数の手術経験を持つ施設です。手術不能と判断された場合は、化学療法や胆管ステント留置などを消化器内科と連携して行っています。閉塞性黄疸の患者さんがいらっしゃいましたら、精査前で結構ですので、当科をご紹介いただければ幸いです。

胆石症

 良性疾患は主に腹腔鏡で手術を行っています。
 総胆管結石がある場合も、消化器内科医と協力して、術前に内視鏡的に結石除去を行い、その後に腹腔鏡で胆のうを摘出しております。

 

膵臓

小田 竜也 ,倉田昌直,橋本真治 が中心に担当しております。

  • 積極的に取り組んでいる膵疾患:
     膵がん、嚢胞性膵腫瘍(IPMN)、膵内分泌腫瘍、その他の膵腫瘍、慢性膵炎、外傷性膵損傷
  • 当科ではあまり治療していない膵疾患:
     急性膵炎

 全がん患者の5年生存率が50%程度になった現在において尚、最も治りにくい難治癌の代表が膵臓がんで、当科で最も力を入れて診療にあたっているものです。1970年代から日本の外科医が中心に邁進した拡大リンパ節郭清、拡大手術の挑戦は、残念ながら満足のいく治療成績を提供できない事が明らかになりました。一方、ジェムザールを初めとする最近の抗癌剤は「ある程度効果がある」と私どもも実感しています。従って、抗がん治療(放射線、抗癌剤)を組み合わせる事により、「何が何でも手術だけで癌細胞を全て取り切る」という今までの外科の基本方針から脱却し、侵襲の大きさを勘案した“適度な手術治療”を提供する事が出来る様になりました。
 高難度手術の代表である”膵頭十二指腸切除(PD)”を2003年以降に120例以上を行ってまいりました。特に、2007年度、2008年度の膵切除例は36例、37例で、茨城県内の膵手術High volume centerの役割を担っています。以前は術後のQOLが決して十分とは言えなかったPDも、今では術後4日目から食事を開始し、平均21日で退院して頂ける標準手術になってきました。
 膵癌に対する手術成績は、世界標準とされるCONCOスタディーの生存期間中央値22.1ヶ月を上回る23.7ヶ月、手術が出来ない局所進行の患者さんにも放射線治療を組み合わせて精一杯の治療成績(15.5ヶ月)を提供しております。今後も、過大侵襲にならないようにバランスに十分留意した上で、積極的な膵手術を提供してまいりたいと思っております。
 また私どもは、放射線診断医、消化器内科医、さらに病理医と毎週、オンコロジーカンファレンスを開催して、全ての膵疾患の患者さんの治療方針を議論して決定しています。一人の医師の、ある時には少し思い込みによる治療方針の決定ではなく、多くの医師の冷静で客観的な目を通して、患者さん毎の治療方針が決められるのも、大学病院の大きな利点です。
 閉塞性黄疸、膵腫瘍の患者さんがいらっしゃいましたら、どうかお気軽にご連絡頂きますよう、宜しくお願いいたします。

 

移植

高野恵輔,高橋一広 が中心に担当しております。

 生体肝移植と献腎移植を行っております。生体肝移植は患者の病態評価はもちろんのこと、提供者(ドナー)の意思、生活などさまざまな要因がかかわり、移植手術に至るまで時間が必要です。肝移植を考慮される症例がございましたらご相談下さい。献腎移植は提供者が少なく、当科の最近5年間の献腎移植数は4例です。茨城県の献腎移植登録は当科と水戸医療センター(担当:湯沢賢治医師)で行っております。