筑波大学大学院 人間総合科学研究科  機能制御医学専攻 脳神経機能制御医学 (脳神経外科学) Department of Neurosurgery, Institute of Clinical Medicine,Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba
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■脳腫瘍

ナビゲーション、蛍光法、術中モニタリング | 放射線治療、陽子線治療 | 中性子捕捉療法
化学療法 | 免疫療法 | 良性腫瘍・下垂体・聴神経腫瘍 | 眼窩腫瘍 | 内視鏡手術

 ・脳腫瘍とは

   脳腫瘍とは頭の骨(頭蓋骨)の内側に生じるできもの(腫瘍)のことです。その場所で最初から生じた原発性脳腫瘍と、体の他の部位のがんが転移してきた転移性腫瘍とに分けられます。原発性脳腫瘍は、脳そのものから発生する腫瘍(脳実質内腫瘍)と、脳を包む膜や脳神経、下垂体などから発生し脳を圧迫するように発育する腫瘍(脳実質外腫瘍)とにさらに大きく分けられています。原発性脳腫瘍の発生は人口10万人当たり年間10−12人の頻度と言われています。脳腫瘍は子供からお年寄りまでさまざまな年代に生じます。原発性脳腫瘍も体のほかの部分の腫瘍と同じように、良性、悪性腫瘍に分かれます。

 ・症状

   脳腫瘍は頭蓋骨の内側に生じるため、ある程度の大きさになると頭蓋骨の内側の圧力が増加することによって、腫瘍の種類に関係なく共通した症状があらわれます。頭が痛い(頭痛)、吐く(嘔吐)、目がかすむ(視力障害)が代表的な症状で、これは頭蓋内圧亢進症状と呼ばれています。特に早朝頭痛と言われるような朝起床時に強い頭痛を訴える場合、食事とは無関係に悪心を伴わずに吐く場合などは、頭蓋内圧亢進が疑われます。

   けいれん発作も脳腫瘍の初発症状として重要です。腫瘍がまわりの神経細胞を刺激することによって生じます。大人になってから初めてけいれん発作が生じたら、脳腫瘍を疑う必要があります。

   頭痛、嘔吐、視力障害、けいれん発作といった一般的な症状に加えて、脳腫瘍の発生した部位の働きが障害されて、麻痺や言葉の障害、性格変化などさまざまな症状が出現してきますが、これらは局所症状と呼ばれます。また、下垂体に腫瘍が発生すると、ホルモンの過剰分泌症状 (無月経・顔貌や体型の変化など)も出現します。
繰り返しになりますが、朝起床時に強い頭痛を訴える場合、食事とは無関係に悪心を伴わずに吐く場合、大人になってから初めてけいれん発作が生じた場合などは、ことに脳腫瘍が疑われますので専門施設の受診をお薦めします。

 ・診断

   症状などから脳腫瘍を疑った場合、現在はCT検査、MRI検査などの画像検査を行うことにより、脳腫瘍があるかどうか、どの場所にあるのかなど、ほぼ100%診断することができます。必要に応じて造影剤を用いた検査が行われます。治療法などを検討するために脳血管撮影、シンチグラム、腫瘍マーカーなどの検査を追加したり、神経機能の評価のために生理学的検査が必要になったりします。

 ・治療

   脳腫瘍が大きくなってくると、腫瘍周囲の脳機能を障害しさまざまな症状が出てくるとともに、頭蓋内圧亢進が生じてきます。たとえ良性腫瘍であったとしても腫瘍の部位、大きさにより命を左右しかねないのが脳腫瘍の特徴です。無症状の場合は経過観察されることもあります。治療を必要とする場合には手術が基本となります。部位によって脳の機能が分かれていますので、腫瘍の部位に応じて異なった機能障害が残る(後遺症)可能性があります。腫瘍の性質によっては放射線治療、化学療法などの補助療法を組み合わせなければならない場合もあります。腫瘍の部位、性質により治療方針が異なってきますので、各腫瘍の項目を参照してください。

(日本脳神経外科学会ホームページより抜粋)


ナビゲーション、蛍光法、術中モニタリング

悪性脳腫瘍(特に悪性神経膠腫)では機械的なナビゲーションと薬理学的ナビゲーションを組み合わせて細胞レベルまでの細かい手術を目指し、さらに術中電気モニターと組み合わせて脳機能を温存するべく安全で確実な手術を行っております。


放射線治療、陽子線治療

脳腫瘍の中には放射線治療がとても有効な種類がいくつかあります。また、手術で完全に摘出できない腫瘍や、増殖が速くて広がりやすい腫瘍の場合にも手術の後、放射線治療が必要になります。さらに、最近はエックス線を腫瘍にできるだけ集中する照射法も開発され、転移性脳腫瘍や手術困難な脳深部の病変に対して、手術の代わりとして放射線が使われる場合も増えつつあります。筑波大学脳神経外科では、放射線腫瘍科と治療方針や治療の適応をよく検討して、このような中から最も適切な放射線治療法を選択するようにしています。また、本学には、陽子線医学利用研究センターがあり、脳腫瘍に対しても陽子線治療を行うことができます。陽子線の特徴は、周りの脳はできるだけ避けて、照射したい腫瘍などの対象に絞って照射が行えることです。頭蓋底腫瘍にはすでに高い有効性が認められており、悪性神経膠腫などに対しても成果が上がりつつあります。このような先進的な機器を用いた高精度放射線治療技術は筑波大学の大きな特色として注目を集めており、脳腫瘍の患者様の予後の向上に大きく貢献しています。


中性子捕捉療法

ホウ素中性子捕捉療法:BNCT(Boron Neutron Capture Therapy)とは中性子をホウ素(B)に当て、その反応から出てきたα線(ヘリウム原子核)とLi原子核を腫瘍細胞に当て、腫瘍細胞を破壊することを目的とした治療方法です。脳内正常部位では血液脳関門(blood brain barrier)がありホウ素化合物は正常脳には取り込まれず腫瘍細胞に選択的に取り込まれます。また組織内でのα線の飛程は細胞一個程度しかなく。これにより正常脳への影響を限りなく押さえて、腫瘍細胞に効果的にα線が照射されます。BNCTが可能な施設は世界的に見ても6施設しかなく日本では茨城県の日本原子力研究所と京都大学原子炉実験所の2施設があります。

(関連資料)PDFイメージ中性子捕捉療法(PDFファイル:1.15MB)


化学療法

脳腫瘍の一般的な治療法には、放射線療法、外科療法、化学療法があります。一部の脳腫瘍は脳以外の白血病や肺がんなどの病気と同様、化学療法の進歩により救命率が最近著しく向上しています。しかし脳腫瘍では化学療法が効きにくく治療の補助として行われることもあり、またいわゆる脳以外の抗がん剤治療とは治療全体のなかでの化学療法の位置づけが多少違います。それは、血液脳関門といって薬剤が脳組織に移動しにくい構造があったり、脳腫瘍が脳以外に転移する頻度が低いこと、逆に脳背髄液にのって播種という広がり方をする場合があること(脳背髄液にも薬剤は移動しにくい)などの脳腫瘍の特徴があるからです。

(関連資料) PDFイメージ化学療法(PDFファイル:1093KB)


免疫療法

脳腫瘍の治療としては、手術、放射線療法、化学療法の3者が、いわゆる標準的治療として行われていますが、脳腫瘍の中でも悪性神経膠腫という種類では、その治療効果はまだ十分とはいえません。そこで、筑波大学脳神経外科では、新たな4つ目の治療法として免疫療法を研究開発しております。これまで主に、患者様の血液の中から、腫瘍を特異的に殺すキラーリンパ球を分離、増殖して再び患者様に戻す養子免疫治療を研究開発してきましたが、キラーリンパ球を薬のように使うので細胞療法とも呼ばれています。この治療法はすでに「高度先進医療」にも認定されており、現在はナチュラルキラー(NK)細胞を使った治療が、筑波大学先進学際研究プロジェクトとして附属病院内の細胞治療室を用いて行われています。また最近は、患者様の腫瘍組織から作成した、自家腫瘍ワクチンを用いた臨床研究も開始され、しだいに有効性が認められつつあります。これらの免疫療法は副作用が極めて少ないことが大きな特徴で、今後患者様の予後やQOLの改善に貢献してゆく新たな治療法として期待されています。


下垂体腺腫・髄膜腫・聴神経腫瘍

 

下垂体腺腫

下垂体はちょうど眉間の奥にあり脳の中心部に位置し、内分泌機能のにおける重要な器官です。腫瘍がホルモンを産生するかしないかで臨床症状が異なります。ホルモンを産生する場合はそのホルモンによる働きが過剰になり症状を出します。ホルモンを産生しない場合はその腫瘍により正常下垂体の機能不全が起こる場合と、さらに大きくなると周囲の脳組織や神経が圧迫されて症状が出現する場合とがあります。薬物治療が第一選択の腫瘍もありますが、手術治療をする場合、経鼻経蝶形骨洞法により腫瘍を摘出する方法が一番良い方法であると考えています。

(関連資料) PDFイメージ下垂体腺腫(PDFファイル:959KB)

髄膜腫・神経鞘腫

脳を覆う髄膜より発生する髄膜腫(原発性脳腫瘍の27%で最も多い)や聴神経などの脳神経より発生する神経鞘腫(原発性脳腫瘍の10%)では、完全摘出によって治癒が期待できます。しかし、頭蓋底部や脳幹近傍の腫瘍では、顔面神経や眼球運動神経などが腫瘍に巻き込まれていることが多く、その摘出は必ずしも容易ではありません。私たちはモニタリング、ナビゲイションを用いながら機能温存を計りつつ、最大限の摘出を心がけています。また、腫瘍が小さい場合、手術でとりきれない場合には、定位的放射線治療を選択する場合もあります。

(関連資料) PDFイメージ髄膜腫・神経鞘腫(PDFファイル:7.33MB)


眼窩腫瘍

眼窩腫瘍とは、眼球の奥などにできる腫瘍で、眼球突出や眼球運動障害、視力障害などの原因となります。種類は、海綿状血管腫や涙腺から出る多形性腺腫が多く、その他には、髄膜腫、悪性リンパ腫、腺様のう胞癌などがあります。筑波大学では、腫瘍の位置や大きさなどから適応をよく検討して、必要な場合には眼科と脳神経外科が共同して、頭蓋内から眼窩へ到達して腫瘍を摘出する手術を行っています。これまで約30例の手術を行ってきましたが、良性腫瘍ではほぼ全例で全摘出が行われております。手術後の美容上の問題もほとんど残らず、悪性腫瘍以外では再発例もありません。


内視鏡手術

21世紀にはいった現在、内視鏡手術は内科、外科、整形外科、耳鼻咽喉科の領域のみならず脳神経外科領域でも広く行われ始めてきました。神経内視鏡手術には内視鏡だけで処置を行なうものと、通常の顕微鏡手術の補助として行なうものの2種類に大きく分かれます。後者の補助として用いる場合は硬性鏡を用いることにより、注視する対象のそばまで 内視鏡を進める事により、顕微鏡では見えない部分が明確に見えてくるためにより正確な手術操作に非常に有用で当院でも顕微鏡を使用する手術の半数に併用しています。今回は前者の内視鏡だけで処置を行なう(この場合は胃カメラに似たファイバースコープを用います)狭義の神経内視鏡手術について詳説します。2002年に診療報酬改正に伴い、神経内視鏡手術が保険診療として認められるようになり、我々も2002年以降、神経内視鏡手術を始め、現在21例に行ってきました。我々が行っている神経内視鏡手術について説明します。対象となる疾患は閉塞性水頭症あるいは原因となる腫瘍性病変です。

(関連資料) PDFイメージ内視鏡手術(PDFファイル:4.13MB)


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