■小児脳神経外科
2009年度 小児(15歳以下)脳神経外科手術件数は118件でした。
小児脳神経外科で対象とする疾患
小児脳腫瘍(髄芽腫、上衣腫、星細胞腫、脳幹部グリオーマ、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、PNET、AT/RTなど)・脊髄腫瘍・頭蓋骨腫瘍
・筑波大学は脳・脊髄腫瘍の治療を専門とする医師が充実しています。手術も開頭手術だけでなく内視鏡手術、経蝶形骨洞手術、定位的手術など疾患に応じた方法を選択します。術中神経生理学的手技やナビゲーションシステムを積極的に取り入れた安全な手術を心掛けています。また陽子線医学研究センターが併設されるなど放射線治療設備も充実しており適切な放射線照射を受けることも出来ます。
・現在、陽子線医学研究センターでは小児悪性脳腫瘍に対する臨床研究もおこなわれています。
・ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は現在のところ成人の悪性神経膠腫を対象としていますが、今後小児にも適応を拡大できる可能性があります。
水頭症
・小児脳神経外科で最も多く扱う疾患です。治療法には大きく分けてシャント手術と内視鏡手術があります。複雑な水頭症では両者を併用することもあります。水頭症の原因や患者さんの年齢などからより適した手術方法を選択します。
くも膜嚢胞
・頭痛やけいれんなどの症状があるとき、くも膜嚢胞によって脳が圧迫されることによる脳機能障害・血流障害が明らかなときには手術をおこないます。部位によって、小開頭顕微鏡手術と内視鏡手術のいずれかを選択しています。シャント手術が必要な場合もありますが、できるだけ避ける方針をとっています。
二分脊椎(脊髄髄膜瘤、脊髄脂肪腫、先天性皮膚洞など)、二分頭蓋(脳瘤)
・脊髄髄膜瘤であれば感染予防、二次的神経障害予防のために生後早期の手術が必要になります。小児外科、新生児科と連携して治療にあたっています。
脊髄脂肪腫では、症状がでている場合、あるいはMRIで脊髄空洞症の変化がでている場合には手術が必要です。脊髄が足のほうにひっぱられた状態(脊髄係留)を解除することが手術の最大の目的になります。球海綿体反射モニターや直接神経刺激誘発筋電図などの術中神経生理学的手技を全例におこなっており手術の安全性向上に努めています。無症候性(症状がない)脊髄脂肪腫/脊髄係留に対する手術適応は議論のあるところですが、泌尿器科など関連診療科と連携をとり、一見しただけでは分からないような症状を見落とすことがないように注意しています。
・二分頭蓋は前頭部・頭頂部・後頭部・前額部・前頭蓋底など頭蓋正中のいずれの部位にも発生します。水頭症を併発していることもあり、段階的な手術となることも少なくありません。
頭蓋骨縫合早期癒合症
・乳児期に頭蓋変形で診断されることが多いのですが、頭蓋形態の改善と頭蓋容積の拡大を両立させる治療が必要になります。そのため形成外科と脳神経外科が協力して治療にあたる方針としています。年齢や早期癒合部位から、従来の頭蓋拡大形成術と近年広まってきた骨延長法とを選択するようにしています。
キアリ奇形・脊髄空洞症
・後頭蓋窩形成不全を背景として小脳が頚椎脊柱管に脱出する疾患です。器が小さいために、本来頭蓋骨の中にあるべき小脳がくびのほうにはみ出た状態です。歩行障害、排尿障害、頭痛、側弯、無呼吸などの症状があるとき、脊髄空洞症を伴っているときには手術が必要です。大後頭孔を中心に圧迫部位の充分な減圧をおこないます。脊髄髄膜瘤に伴うキアリ奇形2型では緊急を要することもあります。
・脊髄空洞症はその原因となっているキアリ奇形や脊髄係留の治療を優先しておこないます。その手術をおこなっても脊髄空洞症が改善しない場合には空洞くも膜下腔シャント術を行います。
機能的脳神経外科
・脳性麻痺などによる痙縮の外科治療(機能的脊髄後根切断術、髄腔内バクロフェン注入ポンプ設置術)や難治性てんかんに対する外科治療にも力を入れています。リハビリテーション科、小児内科神経グループと一緒に治療にあたります。
もやもや病
・内頚動脈・中大脳動脈がかなり細い血管になってしまう疾患です。お子さんでは泣いたり熱いものを食べたりしたときに脳が血流不足となり、手足の麻痺やけいれん発作につながります。小児期に発症したもやもや病に対しては、合併症リスクの低い間接的血行再建術を中心におこない脳血流の改善を図っています。
脳動静脈奇形
・けいれん発作や脳出血で発症することが多い疾患です。再出血予防のために手術治療、血管内治療、放射線治療を最善の組み合わせで行うようにしています。筑波大学ではそれぞれの専門家・設備が揃っています。
頭部外傷
・乳児期に特徴的な硬膜下血腫/硬膜下液貯留は治療の適応を成人と同様に考えることはできません。充分な経験をもった小児神経外科医が治療にあたります。
小児神経外科の病棟・診療体制について
・小児内科、小児外科との混合病棟で、各科の連絡や受け渡しを密にして専門的かつ総合的なチーム体制にて小児診療を行っております。小児脳腫瘍では集学的治療が必要となることが多いのですが、手術は脳神経外科医が担当し、化学療法は小児内科の腫瘍専門医が、放射線治療(陽子線含む)は放射線腫瘍科医が治療を担当します。この際、必要になる中心静脈ライン留置術は小児外科医が手術室で手技を担当します。定期的に小児腫瘍合同カンファレンスを開催しており関係診療科は常に情報を共有しています。このようにして脳腫瘍のチーム治療を受けているお子さんが常時入院されています。
また小児内科には神経疾患の専門家もおり、脳神経外科患者についても内科的治療や神経発達評価などで常時連携して治療にあたっています。2003年7月に新生児集中治療室(NICU)が新設され、2004年4月にはこのNICUを含むかたちで周産期総合医療センターが設置されました。このため、脊髄髄膜瘤や水頭症など先天性疾患の診療が増加してきています。
小児脳神経外科専門外来について
・小児脳神経外科専門外来は毎週火曜日午前中となっております。セカンドオピニオンも随時対応しています。
2009年4月から小児脳神経外科は井原講師が担当しています。井原講師には、国立成育医療センターに在籍していた4年間に1000件以上の小児脳神経外科手術に直接携わった豊富な経験があります。筑波大学脳神経外科がモットーとしている「地域に根ざしつつ、世界トップレベルの脳神経外科医療を提供する」ことができるよう、関係スタッフと協力したチーム医療をおこなっています。 |