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婦人科診療
スタッフ写真 a. 基本的な診療の方針
婦人科診療の中心は、婦人科悪性腫瘍の治療です。悪性腫瘍が日本人の死因の第1位になって久しくなりますが、女性の場合、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌などの婦人科癌は悪性腫瘍の中でも最も罹りやすい病気です。これらの疾患の診断・治療には、婦人科腫瘍に精通した専門医が当たることが大切です。本院では、多くの婦人科腫瘍治療の専門医が婦人科悪性腫瘍の診断・治療にあたっています。また、単に手術を行って治ればそれで良いということではなく、妊娠できる能力を如何に残すことができるかにも、細心の注意を払っています。
この他にも、子宮筋腫、卵巣腫瘍などの良性疾患の治療は、内視鏡(腹腔鏡、子宮鏡)手術を主体とした最新の治療法を導入することにより、より患者さんの負担の少ない治療法を採用するよう心がけています。

b. 子宮頸癌
子宮頸癌は婦人科癌の中では最も多い疾患です。I期以上の進行癌の治療実績数は毎年80名前後と全国の旧国立大学附属病院の中ではいつも上位5位以内に入っています。I/II期癌では、主として自律神経温存の広汎性子宮全摘出術を行い、III/IV期癌では、放射線療法、化学療法の併用により治療成績の向上に努めています。
また最近は、子宮頸癌の若年化、出産年齢の高齢化とともに子宮を温存しながら子宮頚癌の治療を希望する患者さんも増加しています。上皮内癌、微小浸潤癌に対しては積極的に円錐切除術を行い、縮小手術による短期入院(3日間)と妊娠できる能力の温存の両立に心がけています。また、限局した高度異形成や上皮内癌の場合、入院することなくレーザー外来でレーザー蒸散療法も行っています。

c. 子宮体癌
子宮体癌は婦人科癌の中では2番目に多い癌ですが、最近我が国では増加傾向にあります。子宮体癌の治療実績数は毎年50名前後と、これも国立大学附属病院の中ではいつも上位5位以内に入っています。子宮体癌も手術療法が基本ですが、最近はより正確な診断のもとに、よりきめ細かい手術を行うようになってきています。傍大動脈節転移に対しては、徹底廓清を行った後、化学療法に加えて腸管や骨髄への照射を避けた原体照射を行っています。
また、若い時に早期発見された子宮体癌で、どうしてもお子さんのほしい患者さんに対しては、ホルモン療法(高用量MPA療法)により子宮を摘出せずに保存的に治療することも行ったおり良好な予後と術後の妊娠成立との両立を果たしています。

d. 卵巣癌
卵巣癌は、発見時にすでに広い範囲に癌が広がっていることが多く、婦人科癌の中では最も予後が悪い癌です。しかし、最近は手術療法と化学療法を組み合わせる集学的治療法により、その予後が徐々に向上しています。当科では手術ならびに化学療法に造詣の深い医師が卵巣癌の治療に力を注いでいます。特に進行癌の手術では、全大網切除、横隔膜下腫瘍切除、傍大動脈節廓清など積極的なcytoreductive surgeryを行っています。
正確に診断された初期の卵巣癌で妊娠を希望される患者さんに対しては、片側の卵巣と子宮を温存の上、進行期や組織型によっては化学療法の省略も考慮し、良好な予後と術後の妊娠成立との両立を果たしています。

e. 内視鏡手術
婦人科疾患として最も多い、子宮筋腫、良性卵巣腫瘍、子宮内膜症の手術療法においては、従来開腹して手術していました。最近、腹腔鏡手術の進歩により、多くの良性疾患が開腹することなく、より患者さんの負担の少ない腹腔鏡手術で治療可能となっています。当科でも、腹腔鏡手術を行う症例が増加しており、数日以内の短い入院で治療可能です。
この他にも、粘膜下子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどの良性疾患では子宮鏡という内視鏡を用いることにより、全く開腹することなく治療を行っています。

f. 自己血輸血外来
婦人科疾患、中でも子宮筋腫核出術や悪性腫瘍の手術の場合、どうしても出血量が増加する傾向にあります。従来は献血による他人の血液を輸血していましたが、手術に先立ち、あらかじめ自分の血液を採血保存し、その血液を手術中に輸血することにより、輸血の副作用が軽減されます。これを自己血輸血といいますが、自己血を採取するための専門外来を設け、できるだけ他人の血液を用いることなく手術ができるよう心がけています。

g. HPVワクチン外来
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因です。最近、HPVの感染予防を目的としたワクチンが接種できるようになりました。既に世界100カ国以上で投与されており、我が国では2009年10月に厚生労働省の承認をうけています。
このワクチンは病気を予防するためのものなので、保険診療ではなく自由診療となります。また現在、国内で使用されているHPVワクチンはHPVの16型と18型の感染を予防するものです。日本の子宮頸がんの約7割はHPV16型と18型によりますが、残りの3割は他の型のHPVによるがんです。従って、このワクチンの接種だけでは全ての子宮頸がんを予防することはできません。子宮頸がんを予防するのにもっともよい方法は「HPVワクチンに加えて子宮頸がん健診をしっかり受けることだ」ということを忘れないでください。
ワクチンの接種は筋肉注射により行い、3回の接種を受けて頂く必要があります。初回とその1ヶ月後、6ヶ月後が原則です。3回とも接種をうけないと十分な予防効果が得られません。対象となる年齢は10歳以上の女性で、日本産婦人科学会では11〜14歳での接種を「強く推奨」し、15〜45歳での接種を「推奨」しています。妊娠中の方や男性には接種できません。接種費用など詳細は筑波大学附属病院ホームページをご参照ください。

h. 外来化学療法
がん治療の中で化学療法は大きなウェイトを占めていますが、これまでは入院治療が主流でした。しかし近年の副作用対策(支持療法)の発展などに伴い、卵巣がんや子宮体がん、子宮頸がんなどに対する標準的な化学療法は殆どが外来で行えます。外来で化学療法を行うことで、日常生活のリズムを大きく崩すことなくがん治療ができ、生活の質が保証されます。当院でも外来化学療法室を設立し、外来での化学療法がスムーズに行える体制を整えてきました。
そのため、当科では初回の化学療法のみ入院で行い、2回目以降は外来で行うことを勧めています。もちろん、全身状態の悪い方や副作用の強い方など、日帰りで行うことがメリットにならないと思われる方は入院治療となります。
2011年7月に外来で化学療法を受けられた婦人科がん患者は延べ60人でした。