産科診療
a. 基本的な診療の方針
産科診療の中心は、外来における妊婦健診と分娩前後の入院中の周産期管理です。その際、妊婦さんはもちろんのこと胎児も一人の患者さんとしてとらえ、胎児期から新生児期にかけてより良いサポートあるいは医療を提供できるよう心がけております。また、妊娠・分娩は人間の正常な営みですので、過度の医療の介入は慎まなければいけないと考えています。妊婦さんと赤ちゃんが、安全で快適に妊娠・分娩・産褥期を過ごせる ように努力を続けていきます。
本院では2003年7月に新生児集中治療室(NICU)が新たに開設され、2004年4月にはこのNICUを含むかたちで総合周産期母子医療センターが開設されました。さらに、2004年7月には母体胎児集中治療室(MFICU)も完成しました。今後も地域における周産期医療を積極的に担っていきたいと考えています。
b. 母体ハイリスク妊娠の診療
本院の産科の特徴のひとつは、母体に何らかの合併症を持つ患者さんが多いことがあげられます。これらの母体ハイリスク妊娠については、例えば内科や外科などの疾患を持つ患者さんでは、大学附属病院の特性を活かし対応する内科や外科などの専門医と綿密に連携をとりあってその診療を行っています。その結果、従来妊娠や分娩が不可能とされた疾患を持つ患者さんでも、無事に妊娠・分娩され、元気な我が子をその胸に抱くことができた方が増えています。
また、産婦人科的な問題を持つ患者さん、例えば既往帝王切開、骨盤位、妊娠高血圧症候群、子宮筋腫合併妊娠などの妊婦さんについては、内外の最新の医学的データをもとにした科学的な診療を心がけております。分娩時に大量出血の危険性が高い前置胎盤などの妊婦さんについては、積極的に自己血貯血を行っています。
c. 胎児ハイリスク妊娠の管理
本院の産科のもうひとつの特徴は、胎児疾患が出生前診断された患者さんが多く、その管理を積極的に行っていることがあげられます。現在、年平均100例以上の胎児疾患の出生前診断を行っておりますが、その診断には超音波診断をはじめとした画像診断のみならず、遺伝医学的手法を用いた診断なども積極的に取り入れております。また、最先端の診断法である心磁図計測による胎児循環器診断に早くから取り組んでおり、その実績は国内外で高く評価されております。
さらに、当科では必要に応じて胎児期の治療、いわゆる胎児治療も多くの症例で施行しております。施行している胎児治療には多くの種類がありますが、このうち、胎児尿路通過障害に対する「胎児尿路ー羊水腔シャント術」および胎児胸水症に対する「胎児胸腔ー羊水腔シャントチューブ留置術」という治療法は、高度な医療技術として厚生労働省より先進医療として承認されております。本院は、この両治療法の実施をともに認められた東日本唯一の施設として積極的にこれらの胎児治療を行っております。
また、児の周産期管理においては、本院小児科、小児外科をはじめ関係各科と密に連携して胎児管理から新生児管理へのスムースな移行に心がけております。さらにきめ細かい児の周産期管理を目指し、今後も新たな命の誕生を全力でサポートしていきたいと考えております。
d. 遺伝カウンセリング
当科では、毎週木曜日午後に「遺伝・胎児外来」を開設し、上記の胎児疾患の診断とその管理とともに、遺伝カウンセリングを積極的に行っております。臨床遺伝専門医制度により認定された指導医を含む6名が担当し、十分な時間をかけたカウンセリングを心がけております。