ごあいさつ

呼吸器外科は胸部にある肺、気管支、縦隔、胸壁の手術治療を担う科です。対象となる疾患は、肺がんを中心とし、転移性肺腫瘍、胸腺腫等の縦隔腫瘍などに加え、自然気胸、重症筋無力症、膿胸、多汗症、胸部外傷など多岐にわたります。

対象疾患の中心となる肺がんの重要度はますます高くなってきています。日本は、現在2人に1人が‘がん’に罹患し、3人に1人が‘がん’で死亡する時代となりました。がん死亡を部位別にみると男女共に肺がんが最多なのです。肺がんの罹患と肺がんによる死亡は増え続けており、今後人口構成の高齢化にともないこの傾向は強まっていきます。肺がんは現在そして将来的にも日本人にとって最も重要な疾患であると言って過言ではないでしょう。抗がん剤・遺伝子治療・免疫療法・放射線治療も進歩してきていますが、肺がんに対する最も効果的な治療はやはり手術であり、手術可能な時期に発見し、手術を中心とした治療をおこなうことが肺がん対策のカギとなります。

肺がんの手術法は近年大きな進歩を遂げ、大きく胸をあける開胸手術から胸腔鏡を用いた創が小さく体にやさしい低侵襲手術へと変遷してきています。当科では胸腔鏡を積極的に用い、さまざまな工夫を重ね、開胸手術を凌ぐ精度の肺がん手術を安全に遂行しています。さらに2018年からは肺悪性腫瘍に対して、保険診療でロボット支援下手術が行えるようになり、当院でも肺がん、転移性肺腫瘍を中心に積極的にロボット支援下手術を行っています。胸腔鏡手術での多くの経験をもとに、自由度の高い鉗子操作が可能なロボットの導入によりさらに精度の高い手術が可能となっています。高い根治性を保ちながら、痛みの少ない、入院期間が短く社会復帰の早い低侵襲手術により、肺がんの手術後、患者さんは7日前後で退院されます。進行がんの患者さんには、拡大手術および、抗がん剤・遺伝子治療薬・放射線治療を併用した集学的治療を積極的に取り入れ、治療成績の向上に努めています。

当科の理念は、患者さんを中心とした安全で高質な医療を、十分な説明の上で誠意をもって提供することです。そのため、スタッフは日常の診療に専念するのみならず、研究、学会発表ならびに論文発表などの学術活動や、医学生や研修医教育にも力を注いでいます。

病気になり手術を受けるということは、肉体的そして精神的にも大きな試練です。私たちは患者さんが安心して治療を受け、この試練を乗り越えられるよう全力を尽くします。共に病気を克服しましょう。

教授 佐藤幸夫
教授 佐藤幸夫