全身性強皮症の研究

全身性強皮症は、組織の線維化を主病態とするのもですが、間質性肺炎を合併する頻度が他の疾患に比べて高いことが報告されています。近年の疫学調査の結果、全身性強皮症患者の死因の中で、間質性肺炎の占める割合が30年前に比べて約6倍に増加していることが報告されています。間質性肺炎は、特発性の他、膠原病(強皮症、 関節リウマチ、多発性筋炎/皮膚筋炎など)、感染症、放射線治療、薬剤等の様々な原因で発症することが知られています。現在までに、様々な間質性肺炎の病態解明へ向けた研究が行われていますが、その病態に関しては完全に解明されていません。そのために、全ての間質性肺炎を完治することのできる確立された治療法が無く、いまだに間質性肺炎で亡くなられる患者が絶えません。私たちの研究室では、間質性肺炎の新たな病態メカニズムを解析し、間質性肺炎に対する新たな治療法の開発のため、モデルマウスおよび患者さんの検体を用いて研究を進めています。

【間質性肺炎モデルマウスにおけるgdT細胞の機能解析】

gdT細胞は、肺・皮膚等の上皮組織に多く存在し、生体防御に深く関わっている細胞です。私たちは、IL-2+IL-18投与によって誘導される間質性肺炎モデルマウスを用いた研究から、NK細胞マーカーの一つであるNK1.1を発現したgdT細胞 (NK1.1+ gdT細胞)が病態悪化に関与していることを報告しました。間質性肺炎とgdT細胞との関連は、他のモデルマウスでの報告はあるものの、NK1.1+ gdT細胞の病態への関与については報告がありません。

IL-2+IL-18投与後のマウスでは、ヒト間質性肺炎発症初期に類似した肺病理像を呈します(上図A)。 IL-2+IL-18投与後の肺リンパ球を解析したところ、NK1.1+ gdT細胞が増加していることが分かりました(上図B)。従来の報告では、IL-2+IL-18誘導性間質性肺炎においてNK細胞が重要であると考えられてきました。今回の私たちの研究結果より、NK1.1+ gdT細胞がIL2+IL-18誘導性間質性肺炎病態に深く関与していることが新たに分かりました(上図C)。今後は、患者さんの検体を用いて、間質性肺炎病態メカニズムを詳しく解析していきたいと考えています。