IgG4関連疾患の病因・病態の解明

IgG4関連疾患は、諸臓器にIgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う腫瘤形成および線維化を認め、また血中IgG4値の上昇を特徴とする本邦から提唱された新規疾患です。2011年にはボストンで第1回目の国際シンポジウムも開かれており、世界でも急速に疾患概念が広まっています。

2012年には本邦からIgG4-RD包括臨床診断基準が発表され、臨床での疾患理解は徐々に進んできました。一方で本疾患の病因・病態に関しては不明な点が非常に多いのが現状です。

我々のグループでは、「なぜ抗体の中でもIgG4がでてくるのか(なぜIgG4へのクラススイッチが亢進しているのか)?」「なぜ病変に線維化が認められるのか?」という病態の本質に迫る分子メカニズムの解析を中心に研究をすすめています。

IgG4関連疾患患者、シェーグレン症候群(SS)患者および健常人(HC)の末梢血(IgG4:6例、SS:6例、HC:8例)および口唇唾液腺(IgG4:11例、SS:13例、HC:3例)において定量PCRを行いクラススイッチの関連分子を比較しました。その結果、唾液腺局所において、IL-10, TGFβ, AIDの発現が有意に上昇していることを示しました(図1)。

(図1)定量PCRによるサイトカインおよびクラススイッチ関連分子の解析
(Tsuboi H et al. Arthritis Research & Therapy 2012, 14:R171より引用改変)

また、DNAマイクロアレイという手法を用いてIgG4関連疾患患者(3例)とSS患者(3例)の口唇唾液腺を比較し遺伝子解析を行ったところ、CCL18というケモカインが上昇するといった結果もでています。

今後はさらに症例数を増やしてDNAマイクロアレイの再評価を行うと共に、IgG4陽性細胞のin vitroでの機能解析へとつなげることで、本疾患の病因・病態をより深く追求していきたいと考えています(図2)。

    

(図2) IgG4クラススイッチ亢進および線維化の分子メカニズムのシェーマ

IgG4-RDの病態形成においてIL-10, AIDはIgG4クラススイッチ亢進に、TGFβ, CCL18は線維化に関与する可能性が示唆されている。