筑波大学 腎泌尿器外科・男性機能科

疾患の説明

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1.尿路性器がん
   腎細胞がん 腎盂(う)・尿管がん 膀胱がん 前立腺がん 精巣腫瘍
2.前立腺肥大症
3.尿路結石
4.神経因性膀胱
5.女性泌尿器科疾患
6.男性機能障害
7.小児泌尿器科疾患

1.尿路性器腫瘍

腎細胞がん

 腎がんの標準術式は腫瘍のある腎の全摘除ですが、主に径4cm以下の腫瘍に対してはご本人とよく相談の上、腎部分切除による腎温存手術を行っています。また、適応症例には手術の侵襲の少ない腹腔鏡下腎摘術・腎部分切除術を行っています。

 転移例には従来からサイトカイン治療(インターフェロンやインターロイキン2)が行われてきましたが、2008年より分子標的薬が承認されましたので、スニチニブ、ソラフェニブを積極的に使用しています。また、現在、腎がんに対するその他の新規分子標的薬の国内開発が行われていますが、その臨床試験に積極的に参加しており、豊富な治療経験を有しています。このように進行した転移期腎がんに対しても多くの治療手段が開発されてきましたので、個々によく相談の上、最適な治療を行うようにしています。

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腎盂(う)・尿管がん

 より正確な診断をつけることを重視しています。病状によっては尿細胞診で癌細胞が検出されない場合や尿路造影検査等で病変が明らかでない場合など、術前診断が難しいことがあります。このような患者様については、積極的に麻酔下の腎盂尿管ファイバー検査を実施し、観察や組織検査を行ってから治療方針を決定するようにしています。

 転移のない場合は原則として腎尿管全摘除術を行います。当科では鏡視下手術を標準術式として行っており、術後の痛みの緩和と早期の回復に努めています。また、悪性度の低い小さな癌や腎機能低下例など、病状によっては腎温存治療についても検討しています。

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膀胱がん

①筋層非浸潤性(表在性)膀胱がん

 膀胱がんは、筋層に達していない筋層非浸潤性(表在性)と筋層浸潤性に大別され、両者の鑑別が治療において決定的に重要です。

 筋層非浸潤性膀胱がんにおいては内視鏡を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)で治療することができます。

 しかし、治った後に半数以上の患者さんで膀胱内に新たな腫瘍が発生し、その一部は筋層浸潤性に進展するという問題があります。このため手術後に再発予防を目的とした膀胱内注入療法を行います。注入には抗がん剤やBCG製剤を用いますが、どの薬剤を選ぶかは、個々の患者さんの病気の状態に応じて決定されます。

 膀胱内注入療法を行っても再発が完全になくなるわけではありません。再発腫瘍を早く発見するために、外来で定期的な膀胱鏡を行う必要があります。

②筋層浸潤性膀胱がん

 筋層浸潤性膀胱がんに対する標準的治療は膀胱全摘術です。同時に、腎臓で作られた尿の出口を変える尿路変向術を行います。尿路変向術には尿をためる袋をお腹に張るタイプから袋を必要とせず自排尿が可能なタイプまでがあります。しかし、全摘術以外の方法で膀胱を残したいという希望を持つ患者さんも少なくありません。

 浸潤性膀胱がんでも抗がん剤と放射線を併用することによって膀胱をとらずにすむ可能があり、膀胱温存療法と呼んでいます。膀胱温存療法に適した腫瘍は、腫瘍数が1つで大きさが3cm以下のものです。腫瘍の数が多い、あるいは大きい場合、膀胱を残せる可能性は低くなります。

 ご参考までに、筑波大学泌尿器科で行っている膀胱温存療法の流れは以下の通りです。
1)経尿道的膀胱腫瘍切除(TURBT前述)で腫瘍を可能な限り切除します。
2)動注化学療法を3週間毎に3回行い、同時期に膀胱を含めた小骨盤部へX線を照射します。
3)腫瘍部位のTURBTを再度行い、顕微鏡検査で腫瘍の残存を認めなければ、腫瘍部位にX線または陽子線を追加照射して膀胱を温存します。もし腫瘍の残存があれば膀胱全摘術を行う必要があります。

★筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱温存療法をご希望の方へ★

 膀胱温存療法をご希望であっても,腫瘍がかなり大きい場合や,多発して膀胱全体に及ぶような場合など治療できないこともあり得ます。

 具体的に適応があるかどうかについては,詳しい資料とともに受診をして頂く必要があります。適応の判断は通常、泌尿器科セカンドオピニオン外来(自費)で行っていますので、附属病院の泌尿器科セカンドオピニオン外来の窓口(電話029-853-3562)で「膀胱癌の温存療法希望」と告げ、その後の対応を相談してください。主治医の先生とも良く相談し、主治医の先生から当院の泌尿器科に問い合わせて頂くのも一法と思います。 

 いずれにしろ、受診の際は、紹介状,画像診断、各検査の報告書などをご持参いただく必要があり,その上で治療の適応や予定などに関してご相談下さい。

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前立腺がん

 欧米では男性のかかるがんの第1~2位を占める前立腺がんですが、日本などアジア諸国ではではまだ多いとはいえません。しかし、我が国でも検診における前立腺特異抗原(PSA)の測定の普及や、食生活の欧米化などにより近年急激に増加している重要ながんです。

 がんが前立腺内部に留まっている早期がんの場合には、手術(前立腺全摘除術)や放射線治療によってがんを完治することが期待できます。実際にはこれらの治療単独で、または前立腺がんの増殖を抑える抗男性ホルモン療法(ホルモン療法)との組み合わせで治療します。前立腺がんは進行が遅いことも多いので診断と同時に治療を開始するのではなく、進行の兆しが認められるまでは治療を開始せずに厳格に経過を観察していくactive surveillanceと呼ばれる方法を選択することも可能です。どの方法を選択するかは、がんの悪性度、年齢、全身状態など、個々の患者さんの実情を考慮しながら患者さんやご家族、医師との間で十分に相談した上で決定します。放射線治療は放射線腫瘍グループとの協力により当院ではX線または陽子線を用いた外照射で行っていますが、陽子線治療は先進医療として自己負担250万円が必要です。

 一方で骨やリンパ節などに転移を有する場合には、ホルモン療法や抗がん剤などによる薬物による治療が中心となります。特に、最近使われるようになった抗がん剤のドセタキセルは生存期間を延ばすことが示されております。当院では通院での抗がん剤治療も取り入れながら、生活の質を維持した治療を心がけております。

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精巣腫瘍

 精巣腫瘍は若年男性に発症し、年間発病率は約10万人に1人とされる比較的稀な疾患ですが、当科では地域病院との連携のもとに 精巣腫瘍の治療に積極的に取り組み開設以来の症例数は約180例あり、日本有数の治療経験を有しております。

 抗がん剤が著効する本腫瘍では集学的治療を積極的に行い、転移症例であっても、約88%の治癒率を得ております。 また難治症例に対しては末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を行い治療成績の向上をめざしております。

 精巣腫瘍、特に進行した症例では、当初から経験の豊富な医療機関での治療を行うことが推奨されており、 当科は精巣腫瘍治療センターとしての役割を果たしていると自負しています。

 治癒後に挙児を希望する患者さんでは希望により精子の凍結保存も行っております。

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2.前立腺肥大症

 前立腺肥大症は中年以降の男性にみられる、膀胱の出口にある前立腺が肥大することによって尿が出にくくなる疾患です。検査法としては、直腸診のほか、自覚症状をアンケート形式の調査票で、尿の勢いを尿流測定で、残尿量を専用の測定装置で、前立腺のサイズを超音波で計測し、これらの結果を総合して重症度の判定とします。そのほか、前立腺がんが含まれていないかどうかを血液検査のPSA測定などで調べます。

 前立腺肥大症については原則として内視鏡手術を適応し、クリニカルパスのもとに入院期間の短縮を目指しております。 合併症などで手術リスクの高い症例には尿道ステントを適応しております。

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3.尿路結石

 尿路結石は無症状で検診などの際に偶然発見されるものから、突然の激痛発作や吐き気、血尿などで発症するものまであり、発見のきっかけは様々です。尿路結石の痛みは左右いずれかの背中からわき腹、 下腹部にかけての発作的で差し込むような痛みであることが多く、たいへんつらいものです。 結石の位置によって腎結石、 尿管結石、膀胱結石、尿道結石などに分類されます。

 治療法には、体の外から衝撃波をあてて砕石する体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、内視鏡を使って結石に直接衝撃波を与えて砕石する方法、開腹手術によって結石を摘出する方法などがありますが、 結石の位置と大きさや病状などを総合的に考慮したうえで治療法を決めていきます。 結石によっては一回の治療だけでは不十分で、治療法を組み合わせながらの根気強く治療を続けなければならないものもありますが、治療が終了すると激しい症状は一気に消失します。

 尿路結石は再発が多いことも知られており、治療の後でも定期的なフォローが大切です。尿路結石の一部はメタボリックシンドロームと関連して発生するという説も提唱されています。

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4.神経因性膀胱

 神経疾患による膀胱と尿道の機能障害の事です。

 脳血管障害、多系統萎縮症、脊髄損傷、脊髄の感染症や血流障害、腰部脊柱管狭窄症、二分脊椎、広汎子宮全摘などの骨盤内悪性腫瘍手術、糖尿病による末梢神経障害などが原因となります。

 神経因性膀胱のタイプによっては膀胱の変形や腎臓の障害を来したりする場合があります。

 治療方針の決定には尿流動態検査(排尿生理機能検査)が必要となる場合が少なくありませんが、この検査は泌尿器科の中でも専門性の高い特殊な検査の一つですので、当院の神経因性膀胱外来の様な泌尿器科の中でも神経因性膀胱を専門としている医師の担当する外来での診療を受けた方がベターと言えます。

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5.女性泌尿器科疾患

腹圧性尿失禁
せき、くしゃみ、笑う、走る、重いものを持つ、歩くなどの動作でお腹に力が強くかかったときに尿もれが起こります。軽度の腹圧性尿失禁の場合、骨盤の筋肉を鍛えて尿をもれにくくする骨盤底筋訓練を集中的に行うことで症状の改善がみられる方も多く、有効な治療法の一つとなっています。当院では、骨盤底筋訓練の方法を理解しやすいように、フェミスキャンという機器を使用した指導も行っています。骨盤底筋訓練で改善が得られない場合には、手術療法(尿道を特殊なテープで支持するTVTあるいはTOTと呼ばれる手術)も選択肢になります。


骨盤臓器脱 (膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤)
「お風呂に入ったときに、足の間にピンポン玉みたいなものをさわった」とびっくりされて受診される事がある病気です。これは骨盤内の臓器(膀胱、尿道、子宮、直腸)が下がってきて、腟の入口から出てきたものです。その他の症状としては、尿や便が出にくい、下がった臓器が下着にこすれて出血するなどがあります。骨盤臓器脱の患者さんに対しては、リングペッサリー(骨盤内臓器が下がらないように腟内にリングを入れる) と手術療法を行っています。手術療法は2009年の7月からTVM手術を導入しました。骨盤内臓が膣側に脱出して来ないように、膣と膀胱、膣と直腸との間に特殊なメッシュシートを埋め込む手術です。比較的新しい治療ですので、手術の詳しい内容や予想される治療効果や合併症に関しては担当医の方からご説明します。

(なお、現在は新規患者さんの受付はおこなっておりません。)

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6.男性機能障害

 男性更年期障害は男性ホルモン(テストステロン)の減少が引き金になっていると考えられます。女性の場合は女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することで様々な症状が出ますが、男性の場合は、女性ほど急激にホルモンは減少しませんし、その減少の程度には個人差がかなりあります。

 最近、テストステロンの基準値について目安となる報告がありましたが(総テストステロン:4.53 ng/ml、フリーテストステロン:FT:15.7 pg/ml)、これもあくまでも目安であって、テストステロンの値自体と症状の重症度が相関しないことから、実際は以前の状態からどの程度減少したかが問題になることが予想されています。仕事や家庭でのストレスも加わり徐々に症状が現れますが、周囲にはなかなか理解してもらえず、独り思い悩むことになります。

 男性更年期障害の特徴として、ほてりや冷え以外に、精神的にはうつ症状や不眠、体力的には筋力の衰えや体のだるさ、性的には性欲がなくなる、朝立ちの回数が減少するなどの症状が強く現れることです。神経質でまじめ、責任感や競争心が強く、几帳面またはせっかちな人は男性更年期障害を発症しやすいと言われています。

 当外来では初診時に質問紙表、身体検査、血液検査を行い、男性ホルモン(テストステロン)の量や前立腺に病気が無いこと等を確認した後、2-3週間に1回のテストステロン補充療法(注射)を行います。

(くわしくはこちらもご覧下さい。)

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7.小児泌尿器科疾患

 小児泌尿器科疾患としては、尿道下裂、停留精巣、先天性水腎症などの先天性疾患の紹介例が多く、主に手術治療を行っています。

 尿道下裂は尿道の形成不全のために、起立排尿と勃起不全(陰茎弯曲による)をきたす病気で、形成不全尿道の距離で重症度が決まってきます。当科では1~2歳の時期を目安に、重症例(形成不全距離が長い場合)も原則としてI期的形成術を行っています。この形成術は難度の高い手術とされますが、当科の初回手術成功率は約80%と比較的良好です。

 停留精巣は本来、腹部から下降してくる精巣が鼠径部などに留まっている疾患で、将来不妊症の原因となったり、悪性腫瘍の発見が遅れたりすることがあるため、1歳以降に手術を行います。当科では移動性の大きい精巣に対しては観察記録なども行い、手術適応を十分検討の上、治療しています。

 先天性水腎症は尿路(尿のとおり道)が狭いなどの理由で、腎内に尿が停滞し、腎や尿路が拡張したもので、腎機能障害、尿路感染などの原因になります。当科では腎機能の厳密な検査を行い、手術適応、時期についてご家族とよく相談の上、治療にあたっています。今後は患児への負担を軽減するため、鏡視下手術の導入も検討しています。

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最終更新 2011/03/29