筑波大学医学医療系・分子遺伝疫学研究室は「ヒトゲノム多様性と疾患」をキーワードとして研究に取り組んでいます。

自己免疫疾患

免疫系多重遺伝子ファミリー多様性と疾患

免疫系には、HLA、Fcγ受容体(FCGR)、killer cell Ig-like receptor (KIR)、leukocyte Ig-like receptor (LILR)をはじめ、多数の多重遺伝子ファミリーが存在します。これらには、相同性の高いリガンド認識部位を持ちながら、活性化型、抑制型シグナルを伝達するペア型受容体が多数含まれ、免疫制御に重要な役割を担っています。

多重遺伝子ファミリーは、遺伝子重複を繰り返して形成されたと考えられる、互いに相同性の高い多数の遺伝子座により構成されるため、機能的多様性が許容されやすく、疾患感受性遺伝子も多数存在することが想定されます。一方では、遺伝子相互の顕著な相同性、コピー数多様性を含む顕著な多様性のため、特異的な多型解析が困難な領域でもあります。また、KIR、LILRの一部はHLA-class Iをリガンドとすることから、HLAとの遺伝子間相互作用の検討も必要です。これらの理由により、免疫疾患におけるmissing heritabilityに、多重遺伝子ファミリー多型が大きく寄与している可能性は高いと考えられます。

1) FCGR2B-Ile232Thr(rs1050501) と全身性エリテマトーデスとの関連

Fcγ受容体IIb (FcγRIIb,遺伝子はFCGR2B)は、細胞質内に抑制性シグナルモチーフ immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif (ITIM)を有する抑制型シグナル伝達分子で、B細胞や単球に発現します。

FCGR2Bは、ほかのFcγ受容体遺伝子であるFCGR2A, 3A, 2C, 3Bと縦列して1q23の領域に位置します。これらは、いずれもきわめて相同性の高い多重遺伝子ファミリーですが、特にFCGR2Cは、FCGR2Aと 2Bの不等交差によって生じた遺伝子と考えられ、FCGR2Bと2Cの上流側は、エクソンのみならず、イントロンや遺伝子間領域を含め、ほぼ100%の相同性が認められます。このために、FCGR2B特異的な多型解析はきわめて困難です。 私たちは、特異的な解析法を考案し、FCGR2Bの膜貫通領域に位置する232番目のアミノ酸をIleからThrに置換する多型(rs1050501)を見出し、これがSLEと有意に関連することを見出しました。
(Kyogoku et al., Arthritis Rheum 2002;46:1242-54 外部リンク )

この関連は、国内外の研究者により検証され、最近のメタアナリシスでは、集団を超えた有意な関連が確認されています。(Willcocks et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2010 )

私たちは、次に、本田善一郎先生(現在お茶の水女子大学)、河野肇先生(現在帝京大学)との共同研究により、232IleのThrへの置換による機能的な変化を解析しました。FcγRIIbは、同じ細胞上に発現するB細胞受容体(BCR)と、抗原抗体複合物を介して共架橋されたときに、脂質ラフトにリクルートされ、また、抑制シグナルを伝達すると考えられています。

われわれの解析結果では、SLEに関連するFCGR2B-232Thrでは、静止状態、BCR-FcγRIIb共架橋下のいずれにおいても、脂質ラフトへの局在が有意に減弱していました。また、232Thr導入細胞で は、共架橋時のみならず、BCRのみを架橋した場合においても、抑制性シグナルの減弱が認められ、より強い活性化を示すことがわかりました。(Kono et al., Hum Mol Genet 2005;14:2881-92 外部リンク )

これらの結果は、SLEにおけるB細胞の過剰な活性化という病態と整合性を持つものと考えられます。また、膜貫通領域の多型が、ラフトへの局在や蛋白の機能に影響し、多因子疾患感受性に関連する新たな機序を示すものとして、興味深い成果であると考えられます。(Tsuchiya et al., J Hum Genet 2006; 51:741-50 外部リンク 、土屋尚之、本田善一郎、内科 2005; 96:1115-9)

2) Leukocyte Receptor Complexのゲノム多様性と膠原病との関連研究

LILR(ILT, LIR)遺伝子群はKIRに隣接して、ヒト第19染色体長腕19q13.4のleukocyte receptor complex (LRC)に位置し、2個の偽遺伝子を含め、13個の機能遺伝子(活性化型、抑制型あるいは分泌型)から構成されている多重遺伝子ファミリーです。(Tsuchiya et al., Curr Med Chem 2007; 14:431-9 外部リンク )

樹状細胞、単球、T細胞、B細胞、NK細胞、顆粒球、血管内皮細胞など、幅広く血球系に発現し、最近では破骨細胞における重要性や、type I IFN制御における重要性も報告されています。一部のLILRはHLA-class IやサイトメガロウイルスのUL18を認識することが知られていますが、多くのLILRのリガンドは未知です。

私たちは、LILR遺伝子群の多型解析と疾患との関連解析を進めています。これまでの解析では、LILRがきわめて機能的多型に富むことが明らかになるとともに、LILRB1と関節リウマチとの関連(Kuroki et al., Hum Mol Genet 2005;14: 2469-80 外部リンク )、LILRA2とSLE、顕微鏡的多発血管炎との関連(Mamegano et al., Genes Immun 2008;9:214-23 外部リンク )が検出されています。

Leukocyte Receptor Complex (LRC)

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Key Words

ヒトゲノム、遺伝子多型、
人類遺伝、自己免疫疾患、
膠原病、
全身性エリテマトーデス(SLE)、
関節リウマチ、
ANCA関連血管炎、
全身性強皮症、病因解明、
個別化医療

医学医療系 登録研究グループ (リサーチグループ)

ゲノム医科学 リサーチユニッ卜

難治性免疫疾患・アレルギー リサーチユニッ卜

当研究室メンバーは、筑波大学において認定された「ゲノム医科学リサーチユニッ卜
難治性免疫疾患・アレルギーリサーチユニッ卜」の構成員です。

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