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筑波大学 医学医療系 環境生物学研究室
環境生物学研究室
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筑波大学医学医療系 
環境生物学研究室
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研究内容

環境中親電子物質による生体への影響と
応答メカニズム

 環境中親電子物質は分子内に電子密度の低い(親電子性)部位を持つため、電子密度の高い(求核性)タンパク質のチオール基に容易に共有結合し、付加体を形成します(親電子修飾)。この親電子修飾によるタンパク質の構造変化は被修飾タンパク質の担う細胞機能および、それに付随する細胞内シグナル伝達を変化させ生体に影響を与えます(図1)。
 興味深いことは、生体はこの親電子修飾をうまく利用した生体応答システムを持っていることです。体内に侵入した環境中親電子物質は、まず反応性の高いセンサータンパク質(PTP1BやKeap1)と反応します。そして親電子修飾による構造変化により、センサータンパク質が抑制的に制御していた応答分子(EGFRやNrf2)が活性化し、細胞生存、細胞増殖、毒性防御に係る各種シグナル伝達が働くことで生体内の恒常性(健康)が維持されます。しかし、過剰な環境中親電子物質の曝露は非特異的にタンパク質と反応し、細胞内シグナル伝達を破綻させ恒常性の崩壊、つまり病気を引き起こします(図2)。
 我々は現在、環境中親電子物質に対して応答する新奇センサータンパク質の同定とその制御下にある応答分子依存的なシグナル伝達について研究すると共に、センサータンパク質の親電子修飾を起点とした、恒常性の維持に係る各種シグナル伝達の活性化と曝露量増加に起因する当該シグナル系の破綻に由来する2面性の証明に取り組んでいます。 
 

活性イオウ分子による初期生体防御システム

 上記したように、我々の体は環境中親電子物質に対しセンサータンパク質による応答システムを持っています。しかし、不思議なことにこの生体応答には、環境中親電子物質を曝露しても応答しない曝露濃度(閾値)が見られます。このことは、生体に侵入してきた環境中親電子物質をセンタータンパク質と反応する前に捕獲・不活性化している初期防御システムがあることを想像させます。近年、東北大学・赤池教授らとの共同研究により、生体内においてCystathionineγ-lyase (CSE)が非常に高い求核性や抗酸化性を有する活性イオウ分子を産生する主要酵素であることを発見しました。活性イオウ分子はシステインやグルタチオンなどのチオール基に過剰にイオウ分子が付加したCysSSHやGSSH関連物質であり、その化学的特性は分子内に可動性イオウを含有していることです(図3a)。 
 このことから、活性イオウ分子中の可動性イオウが生体内に侵入した環境中親電子物質と代償的に反応することで、その親電子性を奪い生体への影響(タンパク質への親電子修飾)を抑えている初期防御システムの存在が考えられます(図3b)。
 我々は現在、CSE遺伝子欠損マウスを用いて生体での活性イオウ分子による環境中親電子物質に対する初期防御システムの解明に取り組んでいます。さらに我々は活性イオウ分子が植物中にも存在することを発見し、環境リスクの軽減を目的とした植物性活性イオウ分子サプリメントの開発を目指して研究・解析を行っています。