筑波大学 医学医療系 臨床試験・臨床疫学研究室

筑波大学

生物統計学グループ

医学医療・生物学領域のための応用統計学

生物統計学とは、医学医療・生物学領域のための応用統計学の一分野であり、これらの領域で生じる科学的問題に回答を与えるための学問です。新しい治療が既存治療に比べて優れているのか、優れているのであれば、どれくらい優れているのか、といったことを示すためには、統計学が必要になります。

医学医療・生物学領域での研究成果は、データ解析の結果として報告されます。それもあって、多くの人は「統計学とはデータ解析である」と思っている節がありますが、実際には、その研究の計画(デザイン)、実施、解析、報告のあらゆる過程で統計学が必要になります。

その研究仮説(上の例では、新治療が既存治療よりも優れているという仮説)を検証するためにはどのような研究デザインが最適か、研究の目的を反映した評価変数を設定できているか、その評価変数は信頼でき妥当か、既存治療としては何を設定すれば良いのか、研究期間、測定時点、サンプルサイズは必要十分となっているかなど、研究の計画段階から統計学を駆使し、きちんとデータが収集できるように事前に準備しておく必要があります。

きちんと計画していない研究から得られたデータでは、せっかく解析しても正しい結果が得られません。食材(データ)が悪ければ、腕のたつ料理人が調理(解析)しても、美味しい料理にはならないでしょう。逆に、素晴らしい食材を手に入れても、へたな料理人にかかってはせっかくの食材が台無しです。我々は、計画から報告までの過程で生じる統計学的問題を解決するための研究を行っています。

生物統計学の方法論的研究

当グループで行っている研究は、生物統計学の方法論的研究と実践的研究に大別されます。方法論的研究としては、以下の課題に対して、新しい統計手法の開発、既存の統計手法の性能評価、統計手法の使い分けと手法適用における注意点、レビュー等を行っています。

デザインに関するもの

  • サンプルサイズ設定
  • 非劣性試験
  • 中間解析
  • アダプティブデザイン

データ解析に関するもの

  • 経時測定データ解析
  • 欠測データの解析
  • 生存時間解析
  • 歪んだ分布から得られるデータの解析
  • シグナル検出法

方法論的研究の最近の主な論文業績は以下のとおりです(10編)

論文業績の詳細はこちらです。

  1. Maruo K, Tada K, Ishii R, Gosho M (2017). An efficient procedure for calculating sample size through statistical simulations. Statistics in Biopharmaceutical Research. doi.org/10.1080/19466315.2017.1349689
  2. Sato A, Shimura M, Gosho M (2017). Practical characteristics of adaptive design in phase 2 and 3 clinical trials. Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics. DOI: 10.1111/jcpt.12617
  3. Yamaguchi Y, Misumi T, Maruo K (2017). A comparison of multiple imputation methods for incomplete longitudinal binary data. Journal of Biopharmaceutical Statistics, DOI: 10.1080/10543406.2017.1372772
  4. Gosho M, Sato Y, Nagashima K, Takahashi S (2017). Trends in study design and the statistical methods employed in a leading general medicine journal. Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics. DOI: 10.1111/jcpt.12605
  5. Yamaguchi Y, Maruo K, Partlett C, Riley RD (2017). A random effects meta-analysis model with Box–Cox transformation. BMC Medical Research Methodology, 17(109).
  6. Gosho M, Maruo K, Tada K, Hirakawa A (2017). Utilization of chi-square statistics for screening adverse drug-drug interactions in spontaneous reporting systems. European Journal of Clinical Pharmacology 73, 779—786.
  7. Maruo K, Yamaguchi Y, Noma H, Gosho M (2017). Interpretable inference on the mixed effect model with the Box–Cox transformation. Statistics in Medicine 36, 2420—2434.
  8. Maruo K, Yamabe T, Yamaguchi Y (2017). Statistical simulation based on right skewed distributions. Computational Statistics 32, 889—907.
  9. Shimura M, Gosho M, Hirakawa A (2017). Comparison of conditional bias-adjusted estimators for interim analysis in clinical trials with survival data. Statistics in Medicine 36, 2067—2080.
  10. Sato Y, Gosho M, Nagashima K, Takahashi S, Ware JM, Laird NM (2017). Statistical Methods in the Journal — an update. New England Journal of Medicine 376, 1086—1087.

また、当グループでは、以下の書籍を出版し、研究・教育に役立てています

書籍の詳細はこちらです。

  • 生存時間解析入門 原書第2版.

    五所正彦 監訳, 佐藤泰憲, 竹内久朗, 長島健悟, 中水流嘉臣, 平川晃弘, 松永信人, 山田雅之 (2014). 生存時間解析入門 原書第2版. 東京大学出版会. (Hosmer DW, Lemeshow S, May S. Applied Survival Analysis: Regression Modeling of Time-to-Event Data, 2nd. Wiley, 2008.)

  • ゼロから学ぶ 医薬統計教室

    佐藤泰憲, 五所正彦 (2014). ゼロから学ぶ 医薬統計教室. メジカルビュー社

  • 新版 薬効評価

    佐久間昭 著, 五所正彦 編, 酒井弘憲 編, 佐藤泰憲 編, 竹内久朗 編 (2017). 新版 薬効評価. 東京大学出版会

  • イチから使う 医薬統計教室

    五所正彦 (2017). イチから使う 医薬統計教室 -SPSS-. メジカルビュー社

生物統計学の実践的研究も行っています。実際の医学研究(臨床試験や基礎試験)に対して、生物統計学の専門家として参画しています。適切な研究デザインを立案すること、得られたデータを解析すること、結果を誤りなく報告することを目指し、医学研究に貢献しています。実践的研究の研究成果の詳細は担当教員のページTRIOSをご参照ください。

また、筑波大学つくば臨床医学研究開発機構(Tsukuba Clinical Research & Development Organization: T-CReDO)では、試験統計家の立場から、試験計画の立案、統計解析の実施、論文作成・査読対応、統計相談等の業務を通じて、医薬品や医療機器の承認申請にも携わっています。