「構成的手法による脳研究 −脳型コンピュータの開発−」


松本 元(電子技術総合研究所・首席研究官)


 脳は、情報処理する為のアルゴリズムを自動獲得するシステムである。アルゴリズムの表現として神経細胞の結合(回路)とそこでの活動を用いる。アルゴリズムの自動獲得の為の戦略は学習性と学習制御性である。
 脳の生理研究の多くは、脳が獲得したアルゴリズムの解明研究に向けられているが、脳の構成的研究では、脳の自動アルゴリズム獲得の為のアルゴリズムの解明に集中する。
 ここではこのような視点から学習性と学習制御性の脳情報処理のコンセプトを考察し、それが神経細胞と神経回路などでどの様に表現されているかを述べる。
 “脳とはどんなコンピュータか”についても述べる。脳の情報処理システムの特徴を明かにすることは、生理研究結果の解釈や研究の進め方に極めて重大な影響をもつ。
 さらに、脳の働きを工学的に再構成しようという研究は、脳の働きの現象的顕われとしての心の理解と結びつく。この視点から心の特性を考察する。


◇ 脳を創る

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