「Functional MRI の臨床領域における応用」


松村 明(筑波大・臨床医学系脳神経外科)



 Ogawaら(4)によるオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの常磁性の差によるBOLD(Blood oxygen level dependent) imaging の報告以来、MRI を用いた機能的画像の研究が行なわれるようになってきた。本方法を用いてヒトを対象とした研究も行なわれるようになり、光刺激による視覚情報処理や手足の運動による運動野、伝導路、神経核の描出、感覚刺激による臭いや聴覚, 言語中枢の研究やさらには感情などの画像化が発表されてきている。
一方、脳神経外科疾患への脳機能画像の応用の可能性についても検討が行なわれており、血管拡張剤であるダイアモックス(DMX)を用いた脳循環の評価(2,3)や癲癇手術への応用(1,5)などが研究開始されており、さらに脳腫瘍や脳梗塞、外傷後の機能部位の評価や運動機能回復や脳の補足的機能の評価などにもその応用が期待されている。脳梗塞患者におけるDMX負荷はすでに各種検査法(SPECTなど)にて臨床応用されている。DMX負荷による血管拡張の結果おこる脳血流の増加は脳梗塞患者では一様でない。脳梗塞周囲のいわゆるIschemic penumbra では脳血管がすでに最大限に拡張しており、DMX負荷によりintracerebral steel phenomenon が起こることが知られている。
今回の我々の検査ではDMX1gを静注し、Dynamic studyを行なったが、血管反応性の低下は閉塞血管の血流分布と一致した(3)。さらにこの反応の時間差を初めて4次元画像にすることに成功した。癲癇患者においては、痙攣誘発剤や抗痙攣剤を投与して癲癇の焦点を画像化し得た。実際に手術中の所見と一致し、術後に癲癇は消失ないし軽減した。特に抗痙攣剤の使用は元々存在する癲癇焦点を抑制し、negativeな差分画像として病変部を描出し、臨床的にも安全に応用でき、有用と考えられる(5)。 本分野の研究は今後さらに統計的解析手法の向上や臨床的意義の解釈を行うことにより、一般臨床応用される手法になると思われる。

1) Jackson GD, Connelly A, Cros JH et al.: Functional Magnetic Resonance Imaging of Focal Seizures. Neurology 44: 850-856, 1994
2) Kleinschmidt A, Steinmetz H, Sitzer M et al.: Magnetic Resonance Imaging of Regional Cerebral Blood Oxygenation Changes Under Acetozolamide in Carotid Occlusive Disease. Stroke 26: 106-110, 1995
3) Matsumura A, Yoshizawa T, Anno Iet al.: Dynamic Cerebral Oxygenation Change Studies by Functional MRI. Proc.Intl.Soc.Magn.Reson.Med. 1996, 4: pp1878.
4) Ogawa S, Lee TM, Kay AR et al.: Brain Magnetic Resonance Imaging with Contrast Dependent on Blood Oxygenation. Proc Natl Acad Sci USA 87: 9868-9872, 1990
5) Yoshizawa T, Anno I, Matsumura A et al.: Pharmacological Functional MRI Employing the Akaike Information Criterion.: Cerebral Blood Flow in Epileptics During Infusion of Diazepam and its Antagonist. Proc.Intl.Soc.Magn.Reson.Med.1996, 4: pp618

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