「大脳皮質の情報処理機構:視床−皮質応答による解析」ト


山本 哲朗 (三重大学・医学部・第二生理学教室)


 視床−大脳皮質投射は、皮質への入力のうち最も重要なものの一つであり、その結合様式は、部位局在を示すのみならず、皮質内層的分布にも違いがあることが知られている。すなわち、視床−皮質投射線維終末が主に、皮質深層に分布する部位と、表層に分布する部位、両方に分布する部位というように分類される。ネコでは、これらは感覚野、頭頂連合野、運動野に相当する。
 一方、視床−皮質投射の皮質内分布を系統発生学的に比較すると、感覚性入力は動物種差異が顕著ではないが、運動野、頭頂連合野へ投射する小脳性入力は動物種、皮質部位によって、その皮質内分布が異なることが知られている。このような小脳性入力の特徴は、運動機能の系統発生学的分化の違いを反映していると考えられる。
 本研究では、皮質内情報処理機構を視床−皮質応答を指標にとり、ネコを中心とする実験動物で、運動野、体性感覚野、頭頂連合野各層構成細胞の反応性と形態学的特徴を細胞内染色法により解析した。皮質構成細胞の視床入力による賦活様式は、視床入力の皮質内分布と皮質領野の階層性により規定されると考えられた。これらの皮質には、皮質脊髄路細胞が存在し、運動機能代償過程への関与が示唆されており、運動野損傷時の可塑的過程の解析が今後の課題である。

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