「脊髄小脳路系の小脳皮質における投射領域−その縦帯状構成」



松下 松雄(筑波大・基礎医学・解剖学)



 脊髄小脳路系は機能(起始ニューロン)の異なる複数の経路から構成されている。これまで、各経路の終末線維(苔状線維終末)を順行性に標識することにより、小脳皮質における投射領域を調べてきた。その投射領域は、小葉ごとに、縦帯状をなし、さらに、その縦帯状の領域は各経路ごとに異なることが明らかにされた。しかしながら、脊髄からこのような投射領域に到達した情報は、どのような機序で、小脳核からの出力に変換されるのか、また、脊髄小脳路は小脳核にどのような投射をするのかについては、未だ明らかでない。

1.Central cervical nucleus 中心頚核起源の脊髄小脳路軸索は脊髄内で交叉。両側性投射。小脳前葉とォ小葉。I−小葉への投射が多い(全投射量の20−40%)。小葉の基部に投射。A−B帯において3つの縦状の投射野を形成する。(MM & TT, JCN 266: 376-397,1987; MM, Neurosci. Res. 12: 201-216, 1991)。背筋(頭側部)、頭部の筋、頚筋からのI群および群筋求心性線維を受ける。
2.頚膨大起源の脊髄小脳路起始は、層内側群(吻側脊髄小脳路)と・層中央群。同側を上行する。」−、小葉のA−B帯に両側性投射。3つの投射野を形成する。(MM & MI, JCN 263:223-240, 1987)。興奮性入力は単および2シナプス性のI群筋求心性線維、単シナプス性の皮膚求心性線維、多シナプス性の屈曲反射求心性線維からの興奮性入力。多シナプス性で屈曲反射求心性線維からの抑制性入力。
3.Dorsal spinocerebellar tract (DSCT, 後脊髄小脳路)起始はクラーク柱固有ニューロン、クラーク柱辺縁ニューロン、」層ニューロン。軸索は同側の側索を上行。ヲ層ニューロンは交叉性。肋間筋、脊柱起立筋、脊柱の関節(靭帯)支配の胸神経の後枝入力 Thoracic DSCT:両側性投射。前葉(全投射量の60%)とヲ小葉、半球部。9つの投射野がある。投射野1−4 はA−B帯、小葉の先端から基部方向では中央部に限局している。投射野5−9 は半球の中間部−外側部の基部に存在する。(HY&MM, JCN 258:1-27, 1987) Lumbar DSCT: 後肢からの入力。V層群はII群筋求心性線維、皮膚求心性線維を受ける。同側性投射。前葉(全投射量の80%)とヲ小葉、半球部。8つの投射野。投射野1−3:A帯、投射野4−6:B−C1帯、投射野7−8:C2−C3帯。(HY&MM, JCN 281:298-319, 1989)
4.Ventral spinocerebellar tract (VSCT、前脊髄小脳路)Spinal border cells起源。軸索は脊髄と小脳で交叉し、同側の皮質に投射。大腿の伸筋、屈筋からのIa 群、Ib 群筋求心性線維からの興奮性入力。屈曲反射求心性線維からの抑制性入力。小脳前葉(全投射量の約80%)に投射。主に同側性(85%)。4つの投射野がある(B−C1帯、C1−C2、C2−C3、C3−D帯)。小葉の先端部に存在する。(MM&HY, JCN 288:19-38, 1989)5.仙尾髄起源の脊髄小脳路・層内側、ヲ層、」層群:軸索は脊髄で交叉。I−小葉に投射する(全投射量の90%以上)。小葉の先端部で、B帯−C1−C3帯に限局。



(MM, JCN 274:239-254, 1988)(MI, M. Ikeda; MM, M. Matsushita; TT, T. Tanami; HY, H. Yaginuma; GX, G. Xiong; JCN, J. Comp. Neurol.)MM & HY Projections from the central cervical nucleus to the cerebellar nuclei in the rat, studied by anterograde axonal tracing. J. Comp. Neurol. 353:234-246 (1995)MM & GX, Projections from the cervical enlargement to the cerebellar nuclei in the rat, studied by anterograde axonal tracing. J. Comp. Neurol., (submitted)

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