長谷川 潤 助教




[ 研究紹介 ]
 ヒトの持つ五感のうち、「触覚」は痛みや温度、化学物質、機械的刺激といった皮膚への刺
激を感知するものです。このような刺激を直接受容する一次感覚神経細胞は、痛みを感知す
る痛覚神経細胞と圧力を感知する機械刺激覚神経細胞の2種類に大別され、更に分子生物
学的・電気生理学的性質により多くのサブタイプに分類することが出来ます。こうした多種多様
な一次感覚神経細胞は、それぞれ異なる生理的役割を担っていると考えられています。しかし
それぞれの一次感覚神経細胞がどのような刺激の受容を担っているのか、またどのようにし
てそれぞれの受容器からのシグナルが統合され、脳において一つの感覚を形作るのか、その
分子機構は全く分かっていません。本研究ではこれらの問題を分子生物学的に解明すること
を最終目的として研究を行っています。マウス脊髄後根神経節をモデルとして用い、そこに存
在する一次感覚神経細胞の多様性を遺伝子発現パターンの違いによって明らかにすると共
に、マウス遺伝学を用いてそれぞれの一次感覚神経細胞サブタイプや一次感覚神経細胞サ
ブタイプに特異的に発現する遺伝子産物の生理的役割を個体レベルで解析しています。ま
た、それぞれの一次感覚神経細胞サブタイプがどのようにして感覚特異的な神経回路を形成
するのか、その発生メカニズムを明らかにするため、特に脂質代謝系を中心にin vitro、in vivo
の両面から解析しています。このような研究を通して、新たな創薬ターゲットを発掘することを
目指します。


[ 自己紹介 ]
 京都大学大学院薬学研究科博士課程修了後、大阪バイオサイエンス研究所、三菱化学生
命科学研究所を経て渡米。デューク大学で3年ほど研究を行い、帰国。平成20年2月1日に筑
波大に赴任しました。分子薬理学、細胞生物学、解剖学、マウス遺伝学といった様々な研究を
行ってきたので、これらの分野を融合させるような形で新規な研究が展開出来れば、と思って
います。


[ 今後の抱負 ]
 本プログラムの恵まれた環境を生かしながら、常に問題の本質を突く研究をしていきたいと
考えています。また得られた成果を基に、神経系での分子創薬を目指して産学連携なども推
進していきたいと考えています。




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