膠原病抵抗性変異に関する研究
東北大学大学院 病理学講座 病理形態学分野

小野栄夫(おの まさお)

 今回は、膠原病モデルマウスの中に出現した自然突然変異種2例の解析結果を報告する。

[Case 1]  EOD系統は、MRL/lpr雌とBXSB/J雄(Yaa)の交配から金城らによって樹立され、雄は3か月齢までに重篤なネフローゼに陥り、直ちに死に至る短命マウスの系統である。病理組織学的には、半月体形成性糸球体腎炎が顕著で、これによる急速進行性の腎不全が死因と考えられている。我々はこの系統の飼育中に、毛色の変化(不完全アルビノ)とともに顕著に長生きとなる突然変異種を見出した。この変異種では、半月体形成が抑制されており、明らかな腎機能の改善を認めた。連鎖解析により変異遺伝子を求めたところ、機能的に未知のタンパク質をコードする遺伝子上の一塩基欠損であることが分かった。

[Case2] MRL/lpr系統は、SLEなど膠原病のモデルマウスとして解析されてきた。Fasタンパクの欠損により、この系統は、異常リンパ球の蓄積からの脾腫、リンパ腫を呈する。我々は、寿命が6か月足らずのこの系統の中に、顕著に長生きとなり、脾腫、リンパ節腫脹を呈さない突然変異種を見出した。この変異種では、ほぼ全ての自己免疫関連形質の抑制が認められた。連鎖解析により変異遺伝子を求めたところ、ヒトX-linked lymphoproliferation disease (XLP)の責任遺伝子であるSLAM-associated protein (SAP)の機能欠失変異であることが分かった。

[まとめ] 今回報告する2例の変異遺伝子は、元来、自己免疫疾患の病的形質発現にクリティカルな機能を有していると結論付けられる。膠原病の発症がポリジーン系で支配されることとは対照的に、発症の抑制は一遺伝子変異で十分であった。