班会議/感想文

九州大学 生体防御医学研究所 細胞機能制御学部門 准教授

白根 道子

 平成20年9月19日から20日にかけて、越後湯沢で班会議が行われました。私は今年から公募班員として採用していただいたので初めての参加でしたが、2日間大変有意義な時間を過ごさせていただきました。総括班、計画班はじめ運営に携われた先生方のご尽力によるものと、心より感謝しております。

 越後湯沢という気持ちのよいリゾート地で開催され、ゆっくりと温泉(?)にも入れて、日常のラボでの暮らしから少し離れてリフレッシュもできました。アクセスも東京から新幹線で1時間半と、予想外に簡単でした。

 班員の先生方の講演は、刺激になったもの、勉強になったものがいろいろありました。改めてGたんぱく質の幅広く奥の深い世界を感じました。個人的にいくつか印象に残ったお話がありましたが、多くのすばらしいご発表の中から選んで書くのも難しいので、大雑把な感想を述べたいと思います。自分の研究にもっとも関係の深いところでは、Rab関係の話をされた先生方が、数多く存在するファミリーを比較し、全体像(共通性)と個別機能(特異性)とを理解すべくエネルギッシュに研究を進めておられる姿勢が印象的でした。パルミトイル化やプレニル化やファルネシル化などの修飾機構や生理的意義についての話がいくつかありましたが、これらのポストトランスレイショナルな修飾については自分の研究を進める際にも考慮すべき問題で、興味深く聴かせていただきました。神経細胞の移動や分化に関するご研究や、細胞極性形成に関するご研究もいくつかあり、自分の仕事との関連もあったことから面白く聴かせていただきました。TORシグナルを制御する低分子量Gたんぱく質の話も、最近話題になっているシグナル伝達の調節機構として興味深く聴かせていただきましまた。これまで自分の研究とはあまり接点がなかった3量体Gたんぱく質やGPCRの話も多く聴かせていただきましたが、印象に残ったお話がいくつかありました。特にGPCRのリガンド同定に至るまでの一連のお話では、研究戦略や実験手法も含めて勉強になりました。挙げればきりがありませんが、自分の研究に直接、間接に役に立つ話を聴かせていただき、勉強になりました。

 また、懇親会でいろいろな先生とお話しすることが出来たことも、嬉しいことでした。研究の話はもちろんのこと研究以外の話でも盛り上がり、楽しい時間を過ごしました。評価委員の成宮先生と宇井先生もご参加くださり、お言葉を頂きました。宇井先生は、日常生活の勤勉なご様子を伺えたことが心に残っています。また成宮先生が高校の大先輩であることを知り、サイエンスの話やそれ以外のお話しができて嬉しかったです。また知り合いの先生も何人か参加されていて、普段はゆっくりお話する機会がなかったのが、この班会議で交流をもてたことがありがたかったです。自分の研究のヒントになる話、実際に役立つ情報、ただの世間話、いろいろとお話できて有意義でした。

 今後もこの班会議で得たものを生かして、自分の研究がこの特定班の発展に貢献できるよう、研究に励みたいと思います。お世話になった先生、スタッフ、学生の皆様にお礼申し上げます。



平成20年度「G蛋白質シグナル」班会議・感想記

名古屋市立大学大学院薬学研究科 遺伝情報学分野 助教

細田 直

 平成20年9月19、20日2日間、越後湯沢・NASPAニューオータニにて、平成20年度班会議が開催されました。台風が接近してくる中での開催でしたが、心配された交通機関の乱れはほとんどなく、天候についても少々雨が降った程度で、参加された先生方はほっとされていたのではないかと思います。まずセッションの開始に先立ち、領域代表・堅田先生より、これまでの領域の歩み、および昨年9月に実施された中間ヒヤリングにおいて最高評価を得たことが説明されました。非常に良いトレンドに乗って研究が展開していることを再確認し、また本年度より班員として加えていただきました私にとりましては、緊張感を感じる瞬間でありました。

 口頭発表は、前半は個体・細胞レベルでの現象に着目した演題、後半は細胞内シグナル伝達に着目した演題となっておりました。G蛋白質研究の全体像がつかみやすい順序で口頭発表が執り行われており、初めての参加であった私にとって大変有り難かったです。今まで、蛋白質分子レベルでの解析を主として行っていた私にとって、特に前半の演題は新しい視点をいただけるものであり有益でありました。国立精神神経センター・星野先生の、子宮内エレクトロポレーション法など、オリジナリティーの高い技術を駆使することにより、神経細胞の動く方向を感知するメカニズムに迫る研究は興奮を覚えながら拝聴させていただきました。また、哺乳動物に限らず、植物、ショウジョウバエ、線虫なで多様な生物種におけるG蛋白質シグナルについてのトピックスが聞けたことも有益でした。イネの病害抵抗性に着目した奈良先端大学・河野先生の演題などは、G蛋白質機能の幅広さを感じるものでした。mTORシグナルの解析を解説された国立感染症研究所・前濱先生のご講演は、mTORの下流のアウトプットのひとつとして翻訳制御が知られていることから、私自身の翻訳・mRNA分解制御の研究にとって大変参考となるお話でした。ポスターセッションでは、口頭発表とは雰囲気は一変して、実験条件、方法、ツールなどの研究の細部にわたるディスカッションが、特に若い研究者を中心に活発に行われていたのが印象的でした。

 この班会議最後の堅田先生の総括において、各班員が取り組んでいる個々の現象の解析についてすばらしい成果を得ているというお言葉を頂きました。さらにこの2年間では、特定領域研究班として、今までの様々な現象の解析を蓄積することによりGサイクルが担う新しい概念を提示することが目標として示されました。目の前に見える現象に一喜一憂するあまり研究の根幹を日頃忘れがちとなる私の欠点を見事に射止め、これを機会に自らの目標を正確に定めよとご指摘されているようでありました。微力ではありますが、この目標に一歩でも近づけるよう、さらに「G蛋白質シグナル」研究班にお役に立てるよう、精進していきたいと思いつつ研究室に戻ってまいりました。

 最後になりましたが、班会議の運営に当たられました総括班の先生方、そしてPCの接続など裏方でご尽力頂いた堅田研究室の皆様に、この場を借りて厚くお礼申し上げます。


筑波大学大学院 人間総合科学研究科 助教 長谷川潤

 平成20年9月18-20日の3日間、特定領域研究「G蛋白質シグナル」の平成20年度班会議が新潟県南魚沼郡にて開催され、参加させていただきました。台風の接近も危ぶまれましたが、幸い気候にも恵まれ、緑の多い良い環境の中でトラブルもなく開催されることができたのは大変良かったと思います。私にとっては初めての班会議であり、各研究代表者がG蛋白質関連の最新データを持ち寄り、情報交換と共に新たな研究テーマを模索するという、非常に貴重で刺激的な会議を楽しませていただきました。

 会議の冒頭、領域代表者の堅田利明先生より本特定領域研究が目指すものの再確認、そして現在までの活動状況に関してお話がありました。特に本領域研究が、残すところ後2年となったことを踏まえ、最終年度に向けて、現在までに行われてきた各研究グループの成果からG蛋白質研究に新たな概念を吹き込んで総括するようにとのお話があり、気が引きしまる思いで会議のスタートを迎えました。

 本会議では34の研究グループによる口頭発表を中心に進められました。口頭発表はそれぞれ11分の発表と4分の質疑応答という形で行われました。低分子量G蛋白質やG蛋白質共役型受容体の結晶構造解析といった「素過程制御」の研究から、脂質修飾やGEF/GAPによる「G蛋白質の時空間的制御」、「G蛋白質間の連携制御」、そしてノックアウトマウスを用いた「生理機能」の研究まで、幅広い分野からG蛋白質研究を網羅した発表は、本分野の第一線の研究者たちからの活発な質疑を含めて、参加者すべてにとって非常に刺激的であったのではないかと思います。どの発表も非常にレベルの高いものでありましたが、私にとっては特に、低分子量G蛋白質RasのGTP型に2つの異なるコンフォメーションがあることを発見し、それを基に創薬研究を展開されている島扶美先生の発表や、Rabのeffectorを網羅的にハイスループット・スクリーニングされている福田光則先生の発表は、大変勉強になり、印象的でありました。また、神経細胞移動を中心にSeptin群の機能を研究されている永田浩一先生の発表や、M-Ras・R-Rasによる神経細胞の形態形成制御の発表をされた根岸学先生の発表は、G蛋白質というものの多様さ・奥深さを感じさせ、私の中でのG蛋白質に対する興味がより一層深められた発表でありました。

 19日の夕刻に懇親会と一部並行して行われたポスター発表では、フランクな雰囲気の中、22時という会場の時間制限いっぱいまで、大学院生を中心として熱気のあるディスカッションが行われていました。今回の会議では34題のポスター発表でしたが、こうしたレベルの高いディスカッションができる機会をもっと多くの大学院生に積極的に利用していただき、自らの興味やサイエンティフィックな考え方を高めていってもらいたいと切望いたします。懇親会では、評議委員の成宮周先生、宇井理生先生より日本のG蛋白質研究の歴史・系譜に関してのお話があり、若手に向けて叱咤激励をいただきました。そして、ポスター発表終了後は、それぞれ個別にさらに深いディスカッションが行われ、親睦を深めることができたと思います。

 今回の班会議では、普段勉強しても追い付かないほど幅広い領域の最新研究成果を勉強させていただいたのはもちろんのことですが、自分なりの視点から他の研究グループの研究成果を聞くことにより、より幅広い研究の芽を見いだせるのではないかと考えることができるようになりました。今後は、逆に自分の行っている研究を異なる視点から検討し、研究の新たな発展性を見いだしていけることを目指したいと考えています。

 同分野の研究を行いながら、少し違った視点・手法をもって研究している第一線の研究者たちが一堂に会し、自由闊達にディスカッションができる機会は数多くないと思います。この特定領域研究の班会議という恵まれた環境と機会を利用して、歴史的に日本が世界をリードしてきたG蛋白質研究の強みをさらに発展させ、それを引き継ぐべき若い世代が(自戒を含めてですが)、鍛えられることを心から期待しております。最後に、今回の班会議の企画・準備・運営をしていただきました堅田先生をはじめとする総括班員の先生方および堅田研究室の皆様に厚くお礼を申し上げます。


平成20年度 「G蛋白シグナル」班会議 感想

東京大学大学院薬学系研究科 博士後期課程1年 櫻井 京子

 平成20年9月19、20日の2日間、新潟県・越後湯沢のNASPAニューオータニにおいて特定領域「G蛋白質シグナル」研究班の平成20年度全体班会議が開催されました。今回の班会議は、計画班8グループおよび公募班26グループ総勢100名もの方々が参加された大規模なものであり、2日間をかけて各研究班からこれまでの研究成果について口頭・ポスター発表が行われ、積極的な議論が交わされました。

 参加した各班は、細胞内輸送、細胞分化や視覚、翻訳終結、疾患など様々な局面でのG蛋白質の機能を詳細に解明しており、G蛋白質シグナルの重要さを改めて感じました。また、生化学や電気生理学、構造生物学、薬理学など多様な手法を用いた解析を行っており、普段耳慣れない言葉も多くありましたが、最新の研究について学べると共に実験手法についても参考になるものが沢山あり大変勉強になりました。

 今回の発表の中で私が印象に残ったのは、国立感染症研究所の前濱先生らの研究グループからのmTORC1の制御に関与する新たなG蛋白質の同定についての報告でした。この研究では、mTORC1の活性化経路のうちいまだ不明な点が多いアミノ酸刺激によって惹起される活性化について、ショウジョウバエの培養細胞を用いたRNAi実験により制御因子の同定を行っていました。 その中で得られた因子の中には、開口分泌を制御する因子が含まれており、今後アミノ酸応答と開口分泌がどのようにつながっていくのか非常に興味があります。

 1日目のセッションの後には懇親会と若手研究者を中心としたポスター発表が行われました。ポスター発表は34演題と大変多くの発表があり、懇親会の打ち解けた雰囲気の中で自分と同年代の学生や多くの先生方が活発に議論を交わす姿に大変刺激を受けました。今回のようにG蛋白質を専門としている多くの先生方と議論できる機会は大変貴重であり、とても有意義な時間を過ごすことができました。

 最後に、今回ポスター発表最優秀賞に選んでいただき大変光栄に思います。当日は本当にたくさんの先生方にご指摘・ご助言を頂きました。この場を借りてお礼を申し上げます。今後もこの賞に恥じないように日々努力していきたいと思います。