第26回免疫学セミナーのお知らせ

演者:高井 俊行 先生
 東北大学加齢医学研究所 遺伝子導入研究分野 教授



演題:PIRによるMHCクラスI分子認識とその意義

平成18年 9月29日(金)
午後17:30-18:30

医学系学系棟 4B482




講演内容: 
T細胞レセプターおよびNK細胞レセプターによるMHCクラスI(MHC-I)分子を標的とした自己と非自己の識別機構は,
自然免疫および獲得免疫の成立に不可欠である一方,移植免疫においては拒絶や移植片対宿主病(GVHD)を誘発する.
最近我々はPaired Immunoglobulin-like Receptor(PIR,ピア)が約10-6 Mの親和性でMHC-Iを広く認識すること,
この結合にはβ2ミクログロブリン鎖とMHC-Iα鎖の双方が関与し,この結合によりPIRの細胞内モチーフがチロシンリン酸化されることを見出した.
また抑制性のPIRであるPIR-Bの欠損により免疫応答がTh2型にシフトすること,
マスト細胞の感受性が増大するためにアナフィラキシーが強く誘導されることを見出した.さらにGVHDの誘導実験から,
個体レベルにおいてもPIRが自己ならびにアロMHC-Iとの結合によって細胞応答を制御していることが示唆された.
したがってB細胞,樹状細胞,マスト細胞,好中球,マクロファージの分化と機能発現にとって
PIRとMHC-Iとの相互作用による恒常的な制御機構が重要であり,
これら細胞にはT細胞やNK細胞とは異なる新しい自己認識機構が具備されていることになる.
免疫疾患の局面ではPIRはアレルギーやGVHDの重症度を決める重要なレセプターであり,
この新しい自己MHC-I認識システムをコントロールすることができるようになれば
これら免疫疾患の克服に向かう新しいルートが見つかるかもしれない.


問い合わせ先 :  人間総合科学研究科基礎医学系・
                          免疫学免疫学・渋谷 彰  (ashibuya@md.tsukuba.ac.jp) 
   029-853-3281



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