多様な病原体に対して特異的な抗体多様性がどのような仕組みによって形成されるのかついてはBurnetの「クローン選択説」によって解明されたかのように思われた。免疫系のB細胞はこの多様性を達成するためRAG1RAG2分子による特異的な免疫グロブリン遺伝子切断と再構成を誘導し無数ともいえるV領域多様性を獲得している。しかし、その後、ウイルスなどの病原体はさらに高頻度に多様化し、抗体の一次レパートリーでは病原体を排除することができないことが明らかになってきた。抗体はウイルスの変貌に対応するために、V領域遺伝子体細胞突然変異によって抗原に対する親和性を大幅に上昇させていることが明らかになった。この抗体の二次レパートリー形成こそが獲得免疫反応の特徴であったのである。二次レパートリーはAIDのシチジン脱アミノ化により誘導されるが、これには哺乳動物は新たな遺伝子傷害の代償を払っている。その詳細なメカニズム特に、遺伝子変異をV領域遺伝子に限定し、其のDNA傷害を他のゲノムに及ぼさないように収め、どのようにその変異を抗体の親和性獲得に導いているのかについては不明である。本研究では胚中心B細胞で発現が上昇する核内分子GANPAIDと結合しV領域遺伝子へ誘導していることを明らかにしたのでその詳細な分子機構について説明し抗体の親和性亢進について考えてみたい。