研究方針

ウイルスは感染細胞の中で、数多くの細胞由来の因子(宿主因子)を強奪して増殖します。一方、宿主は生体防御系を含む、生理機能の緊急応答を発動し、生命プロセスを維持します。従って、ウイルスによる宿主因子の強奪と生体防御系との競合によって、ウイルスの病原性や種特異性は規定されると言えます。私達は、主にインフルエンザウイルスに着目し、その宿主因子の同定と機能解析を通してウイルスの病原性発現機構や宿主特異性の決定機構の解明をめざしています。

プロジェクト一覧

気道上皮特異的な炎症応答

  呼吸器上皮細胞は、インフルエンザウイルス感染に応答して、炎症性サイトカインを産生し、貪食細胞の遊走により感染体を排除します。一方、炎症が進行すると肺炎を誘導し、病態の悪化へと繋がります。我々は、気道上皮細胞における感染体の認識機構と、それによる炎症応答機構の解析を進め、ウイルス感染病態の理解をめざしています。


ウイルスゲノム複製と宿主特異性

 インフルエンザウイルスゲノムの転写・複製は種特異的であり、その種特異性を乗り越えることで鳥インフルエンザウイルスはヒトに適応する(新型インフルエンザの出現)と考えられています。我々は、各反応に必須な宿主因子の同定・解析を通して、ウイルスゲノム転写・複製の分子機構と、それによる種特異性の決定機構について研究を進めています。


ウイルスゲノム輸送と粒子形成

 細胞核内で複製したウイルスゲノム(vRNP)は、核外輸送後、細胞膜へと移行し、ウイルス粒子に取り込まれます。私達は、vRNPの細胞内動態を制御する宿主因子の同定と、その機能解析を通して、時空間的なウイルス粒子形成機構の解明をめざしています。


ウイルスの生体防御回避

 感染体特異的な分子・構造を認識して、細胞は種々の生体防御応答を誘導します。これに対抗して、ウイルスはこれらを抑制するウイルス因子を進化的に獲得し、生体防御応答を回避します。私達は、細胞生物学的な解析を通して、その分子機構の解明を進めています。