お知らせ
岡部雄太先生、村越伸行先生が心臓突然死を生じる遺伝性心室性不整脈マウスに関する論文を「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」に発表
遺伝性不整脈は、心臓の電気的活動を司っているイオンチャネルやその関連分子の遺伝子異常が原因であり、致死的不整脈を引き起こし、心臓突然死に至る可能性のある重篤な病気です。さらなる発症機序の解明と効果的な治療法・予防法の開発のため、病態を反映した有用な疾患モデルの開発が望まれています。
本研究では、ランダムに遺伝子変異を導入した大規模マウスライブラリの心電図スクリーニングを行い、自然発生的に致死的不整脈を呈する遺伝性不整脈マウスの血統を樹立することに成功しました。遺伝学的解析により、不整脈の原因となる遺伝子変異が心筋リアノジン受容体の新規ミスセンス変異(RyR2: p.I4093V)であることを突き止め、細胞内カルシウム動態の評価により、変異型心筋リアノジン受容体から、極めて強いカルシウムイオンの漏れを生じるために、致死的不整脈が発生していることを明らかにしました。生後1年以内に心臓突然死するという、今までにない重篤な症状を呈するこのマウスは、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍に類似したモデルと考えられ、遺伝性不整脈の病態解明や治療法の開発に貢献することが期待されます。
本研究は筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構、順天堂大学医学部薬理学講座、東京医科大学細胞生理学分野などとの共同研究として行われ、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)(米国科学アカデミー紀要) 2024年4月23日号に発表されました。
Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 Apr 23;121(17):e2218204121. doi: 10.1073/pnas.2218204121

図1:本研究で行なった実験の概要図

図2:遺伝性不整脈モデルマウスの不整脈発生の機序