協和町 脳卒中半減対策のあゆみ


当研究室は、循環器疾患を中心とする生活習慣病の予防を目的として、管内保健所との協力のもとに真壁郡協和町など県内市町村での疫学調査の実施や予防活動に参画し、予防対策の評価を行っています。
このたび、協和町での活動をまとめたビデオ「協和町 脳卒中半減対策のあゆみ」ができましたので、ご紹介します。

<ビデオ再生の方法>

 各テーマの右にある写真をクリックすると、ビデオ再生ソフトが起動され、ビデオを見ることができます。

 各ビデオのサイズは1.5Mバイト〜12Mバイト(合計約53Mバイト)です。
 ビデオの上映時間は合計約29分です。
 ビデオにはナレーションやBGMの音声が含まれています。
 ビデオ再生ソフトとして、MicroSoft社のWindows Media Player用のデータを用意しております。Windows Media Playerがインストールされていない場合は、右アイコンをクリックしてダウンロードしインストールしてください。
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「協和町 脳卒中半減対策事業」が始まるまで

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 昭和56年当時、協和町の人たちの健康状態はあまり良い状態とは言えず,特に循環器疾患、その中でも脳卒中により、寝たきりになった人が苦しんでいました。
 当時の協和町の死亡原因の第1位は「脳卒中」でした。また医療費の面でも循環器疾患が国民健康保険の総額の25%を占めていました。まちでは当時寝たきりの人の総数85人に対し、約半数の40人が「脳卒中」によるものでした。
 そこで,協和町は筑波大学社会医学系の当時の教授で、現在名誉教授の小町喜男先生に町の実情を説明し、町医師会,下館保健所,総合健診協会,筑波大学,教育委員会,学校、食品協会地区のリーダー、農協,農業改良普及所等の協力を得て、「協和町脳卒中半減対策事業」を開始しました。
タイトルイントロダクション

検診事業

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 健診事業として対策開始の昭和56年から平成2年までは循環器一次健診と、二次健診である精密健診に分けて行なわれていました。一次健診の対象者は40歳以上で、問診,身体計測,血圧測定,尿検査を行ないました。
 精密健診は一次健診の結果,精密健診が必要な人を対象としました。対策の開始から町を4地区に分けて、各地区とも4年に1回は40歳以上の住民が全員精密健診を受けられるようにしました。その結果精密健診の累積受診年は約80%にのぼりました。
 平成3年からは基本健康診査として従来の一次健診と精密健診をあわせて実施しています。基本健康診査は,対象は35歳以上で、問診,身体計測,血圧測定,血液検査、心電図検査,眼底検査,栄養診断、24時間蓄尿検査、診察、睡眠時無呼吸に関する特別検査等で毎年3千人以上受診しており、累積受診率は対策初期の8割から最近の7割弱で推移しています。
検診事業

健康診断結果説明会

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 検診後の事後指導として、最初に行なわれるのが結果説明会です。基本健康診査の結果について説明会を開催し、個人の結果を健康手帳に添付し、一人一人の結果について生活処方箋が手帳に挿入されます。結果説明会は検診を受けた人、全員に参加してもらいます。各自受付で手帳を受け取り,説明会で個人個人の結果表の見方の説明を受け、その後医師による健康講話、質疑応答になります。また,個人的な相談がある人は、医師や保健師,栄養士などの健康相談を個別に受けています。
結果説明会

健康教室

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 健康教室を中心とする生活習慣改善指導事業は、検診で要注意や要医療と判定された高血圧者を対象として昭和57年より開催し、服薬時の治療が必要な方には医療機関への受診を勧めています。健康教室は減塩、栄養のバランス、運動、休養、節酒を中心とした講義や実習,個人面接、血圧測定などです。毎年の受講者は、200〜900人に及んでいます。この健康教室の効果としては、平成3年度から平成5年度まで生活習慣改善事業として集中的な健康指導を行い,生活習慣を改善したことによって血圧が低下することが確認されています。
健康教室

地区組織

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 脳卒中半減対策事業を効果的に実施、展開するには町の職員がいくら力を入れても、うまくいかない場合があります。それは住民が「みんなで健康をまもる」ということに価値をみいださず、無関心になってしまう場合です。協和町では、町の限られた人員と予算で効率的に事業を展開するために、昭和55年に女性役員として「保健推進員」、昭和56年には男性役員として「成人病予防対策委員」という地区組織を立ち上げました。この2つの組織は力をあわせて健康づくり活動を各集落で積極的に展開しています。
 その姿が住民の目に映るにつれて、健診は役場に言われたから仕方なく受ける、という受身の姿勢から、健康の保持、増進は住民自らが行なうものというように住民の考え方が変わってきています。この二つの地区組織がなければ、脳卒中半減対策事業はここまで継続、発展させることが不可能であったといっても過言ではありません。
 その他の地区組織として、健康づくり食生活指導委員という組織があります。この組織は1年間町の食生活講座を受け、修了した人たちが会を結成し自主団体として活動しているものです。脳卒中半減対策事業を栄養面でサポートする形で、健康時の栄養調査の補助や、地域での減塩活動を精力的に行っています。
地区組織

健康キャンペーン事業 - 広報事業

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 メディアを通じての活動として、キャッチフレーズを作成し、ポスター、垂れ幕、立て看板などに掲示をしています。また健康カレンダーを作成して、全ての世帯に配布しています。さらに、町の広報誌に減塩記事を掲載したり、健康ミニ広報誌として、月刊「けんこうきょうわ」や「保健センターニュース」を発行して、脳卒中半減対策事業に関する広報事業を行なっています。
広報事業

健康キャンペーン事業 - 町民健康まつり

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 町の行事を介したキャンペーンとして、一般住民の健康意識を高めることを目的として昭和53年より夏に「町民健康まつり」を開催しています。特に昭和56年からは、脳卒中半減対策や、成人病予防に重点を置いたテーマを取り上げています。
町民健康まつり

健康キャンペーン事業 - 健康教育事業

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 子供の頃から健康に関心を持つことは、やがて大人になったときの自分の健康づくりに役立ちます。協和町の小学校では、「食生活とけんこう」という小学3年生、4年生用の健康副読本を使って健康づくりの授業をしています。
 小学校での健康教育は、一連の事業でもユニークな事業といえます。健康副読本による授業のほかにも、夏休み親子調理教室、健康に関するポスターの作成、健康まつりへの参加などを通して、次代を担う子供が成人してから高血圧やその他の生活習慣病にならないように、さらに、子供達の親である若い世代への健康意識を深めるための取り組みが、昭和58年よりなされています。
健康教育事業

健康キャンペーン事業 - 食品協会事業

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 食品協会との協力による活動も大切な事業です。協和町では、食品協会とも協力して、食品協会会員による減塩を中心としたキャンペーン活動が展開されています。食堂やレストランなどが、減塩ポスターや減塩協力店をうたったステッカーを店に掲示し、また健康一口メモを店内に置くなどして、町の事業に積極的に協力しています。
食品協会事業

脳卒中半減対策事業の効果

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 脳卒中半減対策事業を昭和56年から組織的に実施してきて23年が経過しました。事業の効果は、各分野で着実に現れ始めてきています。
 まず、みそ汁の塩分濃度を全世帯を対象に調査しました。対策当初は濃度が1.1g前後であったのが次第に適塩と言われる1.0g、さらに低い濃度のみそ汁が増えています。血圧値の変化から見ると、最大血圧は男女いずれの年齢とも下がりました。特に以前血圧の高かった60歳代では大きく下がっています。また高血圧の人の割合も、男女各年齢とも減りました。食塩摂取量と尿中の排泄量は男女とも減少しています。しかし肥満の割合は男性の50歳代では増加の傾向にあり今後の課題です。
 住民の脳卒中のおこり方の変化を対策の前期、中期、後期に分けてみると、脳卒中の発生率は男女とも前期から後期にかけて約4割減少しました。また、脳卒中をおこした人の生存状況では、69歳以下で脳卒中をおこしても生き残る人の割合は男女とも増え、3年後でも8割を超えました。そしてこれらのことが、寝たきりの人の数の変化に現れ、脳卒中による寝たきりに人の数は、住民が高齢化しているにもかかわらずそれほど増えてはおらず、老人の人口に対する寝たきりの人々の割合は対策初期に比べて約4割減少しました。
 さらに、協和町と近隣の市町村との間で国民健康保険の医療費の変化を比べてみますと、協和町では対策を初めて10数年経ったころから周りの市町村よりも医療費が少なく押さえられ、最近では1人あたり1万1千円安くなっています。協和町の国民健康保険加入者は8千人ですので、町全体としては年間約9千万円の削減となっています。
脳卒中半減対策事業の効果

脳卒中半減対策を振り返って

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筑波大学教授 社会医学系 社会健康医学 医学博士  磯 博康
協和町役場 健康福祉課 課長 横田 紀美子
 
脳卒中半減対策を振り返って

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