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スタッフ紹介

Shoda Junichi
正田 純一(しょうだ じゅんいち)

医学医療系 客員教授

近年では肥満に関連した肝機能障害を有する成人の頻度が急増しています.この背景には脂肪肝の増加が大きく関わっています.脂肪肝はメタボリック症候群の肝臓の表現型です.わが国では4人に1人が脂肪肝になっていると推測されています.脂肪肝は全身疾患とみなされており,全身臓器と互いに連関することが知られています.脂肪肝は肝臓のみならず,心血管疾患や慢性腎臓病などと複雑に連関する疾患です.脂肪肝の発症には内臓脂肪の増加に加えて,骨格筋の減少や筋力の低下(サルコペニア)も注目されています.脂肪肝では栄養管理のみならず,骨格筋の増加や維持に向けた運動実践の実施が重要な課題です.

本学附属病院では「つくばスポーツ医学・健康科学センター」を設置し,その健康増進部門では,肥満や脂肪肝の患者様のための食事・運動指導を実施しています.肥満治療に対するスポーツ医学を応用し,脂肪肝の予防・治療に関する運動療法プログラムを作成し,筋肉を鍛えることにより肝臓の機能をアップして,脂肪肝の病態改善を図っています.肝臓生活習慣病外来では、肥満による慢性肝疾患の治療の中心に運動療法をおいて,効果的な改善を図るためのプログラムを考案し,医学的エビデンスにもとづいた診療をおこなっています.

研究面では,日常臨床の場にて応用が可能な研究を最優先に掲げ,生活習慣病領域における消化器疾患の疾病予防,早期診断,運動療法を含む治療医学に貢献出来る臨床研究を実施しております.附属病院における臨床試験では,骨格筋の減少と内臓脂肪の増加は,生活習慣病の頻度を増加させ,肝線維化の肝病変を進行させること,この体組成の異常を放置すると,肝線維化が進行することを明らかにしました.また,日本人の脂肪肝の肝線維化に関連する食品の絞り込みを目的に,食習慣に関する調査を開始し,肝線維化を促進する食品および抑制する食品を明らかにしました.さらに,スポーツ医学の見地より,中年肥満男性の運動療法試験を実施して,運動療法は体重の減少は軽微であるが骨格筋量を維持し,様々な炎症や酸化ストレス障害を改善させ,運動療法には体重減少に依存しない脂肪肝の治療効果を発揮することを明らかにしました.

加えて,脂肪肝の疾病病態の解明,生体防御系の賦活化による新規治療法の開発を目指し,脂肪性肝炎,肝硬変,肝癌を自然発症する遺伝子改変マウスを新規に作製しました.発明特許の獲得を契機に,精力的に基礎研究についても邁進しています.ごく最近に得られた動物実験の新しい研究成果として,骨格筋への抗炎症・酸化ストレス応答転写因子の導入とそれらの活性化が,筋-肝連関を介して,脂肪肝から肝線維化進行による脂肪性肝炎(NASH)の発症を抑止することを見出しました.NASHの発症を予防するための骨格筋の役割,運動療法の重要性が明らかになりつつあります.


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