Matsui Hirohumi
松井　裕史（まつい　ひろふみ）

On ne voit bien qu’avec le cœur!
心で見なければ何も見えない。L’essentiel est invisible avec les yeux.大切なものは眼には映らない、と続くこの一節はLe Petit Prince（邦題「星の王子様」）の最も有名なセリフです。初めてこのフランス語を目にした18の時からたいそう気に入り、今でも研究室の入口に印刷した紙を貼ってあります。気が付けば研究生活も35年を超えましたが、およそ研究において最も大切な本質の正鵠を射ている言葉だと私は感じます。眼は事象を捉えてくれますがそれが意味することを理解するのは心です。実験すれば結果が出ますがその意味を理解するのは心です。特に仮説と真逆の結果が出た場合、「そんな筈はない」と慌ててしまいます。いやいや、神様は打ち立てた人間の浅はかな仮説を小ばかにしつつ、その力量を試さんと矛盾したデータを出してくださっているのかもしれません。素直にデータを受け入れ、改めて意味するところ、論理構成を考えてゆく成果として、大いなる前進と新たなる発見に恵まれることを幾度か味合わせていただきました。『自分にもこんな発見ができるんだ』という成功体験は、さらなる研究への強い動機付けになるのです。
還暦を過ぎても研究への意欲は未だ衰えません。2022年から新しい課題に挑み、少しずつ伸展しているところです。応援してくれる人もだんだん増えてきました。みんなの知恵を寄せ合って、必ず達成し、均霑化したいと思っています。研究に出会えて本当に幸せです。