「運動リズムの発現にかかわるニューロン回路の機能分化」
工藤典雄 (筑波大・基礎医・生理)
ラット、ハムスター等は、他の哺乳動物に比べて未熟な状態で出生し、新生児には、そのエネルギー代謝は無気的解糖反応に依存している。 したがって、生後1週目位までの新生ラットでは、摘出された脳や脊髄は、エネルギー源としてグルコースを含む生理的塩類溶液中で、その機能を十数時間維持することが可能である。私どもはこの新しく開発された実験系を用い、運動出力に最も近い中枢神経系である脊髄を対象にして、そのニューロン機構の機能分化についての研究を進めている。
この in vitro の実験系では、脳幹を電気刺激したり、潅流液中に興奮性アミノ酸を投与することによってリズミカルな歩行様運動を励起することができる。 そこで、この新生ラットの脳幹脊髄標本や脊髄後肢標本を用いて、運動リズムの発現にかかわる伝達物質やレセプターの役割について調べ、さらに、いろいろな日齢のラット胎児の脊髄摘出標本を作成し、運動リズムのパタンの分化について解析した。

