研究内容 

造血発生のメカニズム
 動物はみな胎児の頃から造血を開始し、最初はヘマンジオブラストから、後に造血幹細胞からさまざまな血球細胞を死ぬ直前まで作り続けます。ヘマンジオブラストや造血幹細胞が、いつどんな方法で赤血球への運命を決め、分化するのか。そのしくみを分子レベルで解くことが目標です。分化後に前駆細胞の性質を喪失させる重要性にも注目しています。



血球分化のなぞを知る研究

 私たちの体のひとつひとつの細胞は、全く同じ遺伝子を持っています。にもかかわらず、血球細胞と神経細胞では、形や機能がまったく違います。なぜでしょうか?それは、働く遺伝子のセットが異なるからです。それでは、どうやって働く遺伝子のセットを変えるのでしょうか?細胞特異的な転写因子があり、その転写因子がその細胞で働く遺伝子のセットを決めるからです。それでは、どうやったらある細胞で細胞特異的な転写因子がでてくるのでしょうか?実は、この問題はよくわかっていません。ニワトリか卵かみたいな話です。私たちは、このなぞを明らかにするために、細胞分化の研究が進んでいる血球細胞を用いて研究しています。造血幹細胞は、赤血球にも、免疫細胞にも、骨髄球にもなることができます。しかし、ある時に運命が決まり、その方向性に邁進します。この運命決定機構を明らかにしたいと考えています。

 

 私たちは、赤血球特異的な転写因子Gata1がどうやって赤血球前駆細胞ででてくるのかに注目しました。そのために、Gata1発現が異常となるゼブラフィッシュを単離しました。その原因遺伝に、エピジェネティック因子が浮かび上がってきました。現在、非常にホットな研究をしています。

 

【参考文献】

1. Takeuchi et al. (2010) Efficient transient rescue of hematopoietic mutant phenotypes in zebrafish using Tol2-mediated transgenesis. Dev Growth Differ., 52: 245-250.

2. Iida et al. (2010) Metalloprotease-dependent onset of blood circulation in zebrafish. Curr. Biol. 20: 1110-1116.

3. Kobayashi and Yamamoto (2007) Regulation of GATA1 gene expression. J. Biochem. 142: 1-10.

4. Shimizu et al. (2007) Gata-1 self-association controls erythroid development in vivo. J. Biol. Chem. 282: 15862-15871.

5. 小林麻己人 (2006) 赤血球分化を制御する遺伝子ネットワーク 細胞工学., 25: 13-16.

6. Nishikawa et al. (2003) Self-association of Gata1 enhances transcriptional activity in vivo in zebra fish embryos. Mol. Cell. Biol., 23: 8295-8305.

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