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毒にも薬にもなるストレス感知機構の研究

 高齢化社会を迎え、健康年齢という概念がでてきました。長生きしても、寝たきりでは困ります。健康保険のシステムは破綻し、患者数を減らすべく、予防医療の重要性が叫ばれています。

 私たちが注目したのは、飲食物を含めた生活環境です。例えば、ブロッコリースプラウトやターメリックは、内包するイソチオシアネートやクルクミンといった親電子性物質の作用によりがん予防効果を発揮します。一方で、親電子性物質は発がんの原因でもあります。どうしたら毒になり、薬になるのか?その鍵は、私たちが研究しているNrf2システムが握っています。Nrf2システムは、さまざまな化学物質や酸化ストレスに応答して、生体防御遺伝子群を発動します。誘導剤は多種多様です。では、どうやってこの多様性が生まれるのか?私たちは、その解明に取り組んでいます。

図5 Nrf2システムとがん予防(上)

図6 Nrf2活性化の機構(右)

 魚類にもNrf2システムはあり、私たちは、親電子性物質に応答できない突然変異ゼブラフィッシュ系統の単離に成功しました。また、薬物に応答して光るトランスジェニックゼブラフィッシュも作製しました。これらのモデル動物の解析を通して、Nrf2システムがさまざまな形の親電子性物質や酸化ストレスに応答できるのは、特異性の異なる複数のストレスセンサーをもつからであり、それを統合するメカニズムがあることを明らかにすることができました。現在、それぞれに関わる分子や機能ドメインを同定することにより、その解明を目指しています。

 多種多様のストレスに応答して生体防御に働くNrf2システムの活性化機構はプロテアソームによる分解の回避です。

イラストは、筑波大学芸術専門学群・高橋啓太さんの作品です。

【参考文献】

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