研究成果

業績資料(加藤)

Maruzuru Y, Fujii H, Oyama M, Kozuka-Hata H, Kato A, Kawaguchi Y.
Roles of p53 in herpes simplex virus 1 replication.
J Virol. 2013 Aug;87(16):9323-32.

概要

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)がコードするICP22は、遺伝子発現制御因子であると報告されていたが、その作用機序やその他の機能については殆んど不明であった。本研究では、ICP22と複合体を形成する宿主因子をインターラクトーム解析により網羅的に探索し、同定されたタンパク質の中から、p53に着目した。p53はアポトーシス、細胞周期、細胞の老化、DNA修復、オートファジーや初期免疫を制御することが、最もよく知られた転写因子の一つである。一連の解析の結果、p53にはHSV-1増殖を促進する正の作用と、HSV-1増殖を抑制する負の作用があるが、HSV-1はICP22によってp53の負の作用を阻害することで、p53の正の作用のみを享受していることが明らかとなった。本知見より、HSV-1はICP22を進化上獲得することで、子孫ウイルスの産生により適した細胞内環境を生み出す能力を獲得してきたと考えられる。