主な論文・総説
- Mais Maree, Yuri Ushijima, Pedro B Fernandes, Masato Higashide, Kazuya Morkawa. SCCmec transformation requires living donor cells in mixed biofilms. Biofilm 7, 100184. 2024. open access
- Kouhei Mizuno, Mais Maree, Toshihiko Nagamura, Akihiro Koga, Satoru Hirayama, Soichi Furukawa, Kenji Tanaka, Kazuya Morikawa. Novel multicellular prokaryote discovered next to an underground stream. eLife 11:e71920. 2022. open access
- Mais Maree, Le Thuy Thi Nguyen, Ryosuke L. Ohniwa, Masato Higashide, Tarek Msadek, Kazuya Morikawa. Natural transformation allows transfer of SCCmec-mediated methicillin resistance in Staphylococcus aureus biofilm. Nat Commun 13,2477. 2022. open access プレスリリース
- Vishal Gor, Ryosuke L. Ohniwa, and Kazuya Morikawa*. No Change, No Life? What We Know about Phase Variation in Staphylococcus aureus. Microorganisms 9, 244. 2021. open access
- Kazuya Morikawa*, Yuri Ushijima, Ryosuke L. Ohniwa, Masatoshi Miyakoshi and Kunio Takeyasu*. What happens in the staphylococcal nucleoid under oxidative stress? Microorganisms 7, 631. 2019. open access
- Morikawa K, Ohniwa RL, Ohta T, Tanaka Y, Takeyasu K, Msadek T. Adaptation beyond the Stress Response: Cell Structure Dynamics and Population Heterogeneity in Staphylococcus aureus. Microbes Environ 25(2):75-82. Review. 2010. pubmed
メチシリン耐性遺伝子を運んでいる「動く遺伝子」であるカセット染色体(SCCmec)が自然形質転換で伝達する際に、ドナー側が生きている必要があることがわかりました。なぜドナーが生きている必要があるか、は今後の課題の一つです。
新規な多細胞性の細菌についての共同研究です。この細菌は光を通すと虹色に見えるコロニーを作り、その内部に形態が異なる細胞を溜め込み、水流に触れると内部の細胞だけが放出されます。まるで胞子嚢のような振る舞いです。この発見に基づいて、「単細胞が多細胞に移行する際にどのように選択圧が働き遺伝的性質として固定されるのか」という謎に対する重要な意味を議論しています。
バイオフィルム内でSCCmecが自然形質転換で伝達することを示しました。SCCmecの伝達方法はMRSAの出現以来半世紀に渡って未解明でしたが、その一つの方法を確かな証拠に基づいて示すことが出来ました。この研究は、2003年 Genes Cells, 2012年PLoS Pathogenに続く研究で、約20年かった困難な研究でした。
相変異(Phase variation)は、高頻度に切り替わる可逆的な遺伝子発現スイッチ(の結果として生じる表現型の変換)としてよく知られた現象です。 相変異は遺伝的またはエピジェネティックなメカニズムで生じ、感染した宿主内での適応戦略や、バクテリオファージ(細菌に感染するウイルス)からの感染に対する戦略によく見られます。このレビューでは、細菌のPVを生成するメカニズムを概説し、黄色ブドウ球菌における相変異の初期および最近の発見(我々が見出したAgr相変異や、SigHの相変異様メカニズムを含む)をまとめました。また、PVはもっと様々な遺伝子で起こっている可能性があることについても述べています。
日和見病原体としての黄色ブドウ球菌の成功は、様々なストレスや宿主の殺菌因子に対処する能力によるところが大きい。活性酸素種は、貪食(ファゴサイトーシス)された病原体を不活化する宿主の重要な武器ですが、黄色ブドウ球菌はファゴソームで生き残り、貪食細胞から抜け出して感染を成立させることができます(これが慢性的感染、または再発の原因の一つとして考えられます)。このレビューは、酸化ストレス下のブドウ球菌核様体の動態に関する我々の一連の研究を解説しています。原子間力顕微鏡と分子遺伝学的解析により、MrgAというタンパク質(Dpsファミリータンパク質)が酸化ストレスに応答して発現し、核様体を通常のファイバー状から凝集状態に変換することが明らかになりました。これは、大腸菌が定常期にDpsによって凝集させる核様体とは機能的および物理的に全く異なる状態であることがわかりました。さらに、ブドウ球菌のライフサイクルにおける核様体凝集の新しい役割として「ゲノム複製起点周辺の遺伝子発現制御」の可能性を提案しています。
細胞構造のダイナミクスや集団不均一性の研究からブドウ球菌の重要な特性の理解を進めてきた経緯と展望をまとめました。当研究室の基本的な考え方となっています。