CD72のスプライス・アイソフォームと関連する多型と、
全身性エリテマトーデス発症におけるFCGR2B多型との遺伝子間相互作用
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FcgRIIb同様、CD72もB細胞に発現する抑制型受容体です。われわれは、ヒトCD72遺伝子に、第8イントロンの13塩基の反復配列と4塩基挿入を含む4個所の多型部位により2種の主要ハプロタイプが存在し、うち一つ(ハプロタイプ2)が全身性エリテマトーデス(SLE)における腎症の合併に抵抗性に作用し、また、FCGR2B-232ThrのSLE発症リスクを有意に減弱させることを見出しました1)2)。 これらはイントロンの多型なので、スプライシングに影響する可能性を解析したところ、第8エクソンを欠失した新規スプライシング・アイソフォーム(AS型)が検出されました。さらに、遺伝子型とスプライシング効率の関連を検討したところ、ハプロタイプ2の数に依存して、AS型mRNAが顕著に増加することが見出されました。AS型は、通常型アイソフォームにおいてストップコドンが存在する第8エクソンを欠失するため、C末端側42アミノ酸が、新たな49アミノ酸に変化した蛋白をコードすると予測されます。 以上の結果から、CD72のAS型産物は、何らかの機序により、B細胞に抑制的に機能し、FCGR2B-232ThrによるSLE発症リスクを減弱させる遺伝子多型間相互作用が存在することが示唆され3)、その分子機構を検討中です。 このような現象は、それぞれの遺伝子の主要アリルのみを見ていたのでは決して見えてきません。ゲノム多型やスプライシング・アイソフォームを考慮に入れて、免疫系の分子間相互作用を三次元的に構築することにより、初めて人類集団レベルにおける免疫系ネットワークを論じることが可能になることを示す例と考えられます。 文献 1) Hitomi Y, Tsuchiya N, Kawasaki A, et al. CD72 polymorphisms associated with alternative splicing modify susceptibility to human systemic lupus erythematosus through epistatic interaction with FCGR2B. Hum Mol Genet 2004; 13: 2907-2917. 2) Tsuchiya N, Honda Z, Tokunaga K. Role of B cell inhibitory receptor polymorphisms for systemic lupus erythematosus: a negative times a negative makes a positive. J Hum Genet 2006;51:741-750. 3) 土屋尚之、本田善一郎:目で見るバイオサイエンス:SLEの遺伝子多型。内科 2005; 96:1115-1119. |
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