分子遺伝疫学チーム
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ヒト免疫系遺伝子には、HLAに代表されるように、顕著なゲノムDNA多型による個体差が認められます。これは、感染症という選択圧のもとにヒトゲノムに形成されてきた多様性であり、このような多様性が、微生物やアレルゲンなどの環境因子に対する免疫応答の個体差の基盤になっていると考えられます。 また、免疫系遺伝子の多くに機能的なスプライシング・アイソフォームが存在し、細胞環境に応じた制御を受けて発現しています。これにより、一個体の中においても、トランスクリプトーム、プロテオームレベルの多様性が生じます。 これまでの免疫学、分子生物学では、それぞれの分子の代表的な対立遺伝子(アリル)、アイソフォームを用いて、その分子の、個体や種を超えて共通の機能を明らかにしてきました。しかし、免疫系において、進化の過程で獲得されてきた多様性は、それ自体が本質的な特質であると考えられます。すなわち、人類集団における免疫系の全体像を把握するためには、それぞれが多様性を持った分子同士による相互作用のネットワークを考えなければなりません。 私たちの研究グループは、この問題にアプローチするために、免疫系において機能する分子の多型をヒト集団においてスクリーニングし、代表的な全身性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus, SLE)、関節リウマチ (rheumatoid arthritis, RA)、強皮症 (systemic sclerosis, SSc)、顕微鏡的多発血管炎 (microscopic polyangiitis, MPA)などとの関連を検討し、かつ、その多型によって生じる機能的な変化を解析しています。以下にいくつかの例を示します。 これらの研究成果から、免疫系遺伝子はきわめて機能的多様性に富むことが再確認されたとともに、同じ疾患であっても、集団によって、疾患感受性多型が異なることが見出されました。これは、各集団における遺伝的背景および環境が大きく異なることに関連するものと思われ、日本、アジアの医療は、日本、アジアのデータを基礎に構築されなければならないことが再確認されました。 現在は、特に、SLEの病態における重要性が注目され、かつ、生体における重要な環境応答系である I 型インターフェロン関連分子、toll-like receptor関連分子に興味を持って、多様性解析を施行しています。 また、病変組織に発現する遺伝子を先入観なしに検出することにより、病態上重要な役割を持つ遺伝子を見出し、創薬の分子標的を探索する研究も行っています。この例も示します。 |
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