臨床研究「予後に基づく肺腺癌の病理診断を補助するAIエンジンの開発」について
筑波大学附属病院病理診断科では、標題の臨床研究を実施しております。
本研究の概要は以下のとおりです。
① 研究の目的
本研究は、肺腺癌の患者さんの病理診断や、術後の治療方針の決定を補助するため、肺腺癌の病理診断を行うAIエンジンを開発することを目的としています。
肺腺癌に対して手術を受けた患者さんの検体(摘出された肺)は、病理医が肉眼的、顕微鏡的に観察して、最終的な病理診断を行っています。病理診断では、検体に癌があるということだけではなく、「どんな顔つきの癌が(組織型)」「どれくらい広がっているか(深達度)」ということを判定します。肺腺癌の進行期(浸潤癌)では、組織型によって、同じ大きさの癌でも予後が異なる(術後5年以内の再発・転移の確率が異なる)ことが知られています。肺腺癌の診断において、組織型を診断し、術後の予後を予測することが、ひとりひとりの患者さんの治療方針を決定する上で重要な意味を持っています。
しかし、肺腺癌の浸潤癌の病理診断は定義が複雑で、肺腺癌の病理診断に習熟した人と、そうでない人の間で、病理診断に誤差が生じてしまう恐れがあります。さらに、そもそも病理診断を担う病理専門医の数が日本では全国的に不足しているという問題があります。
近年、医療の現場でもAI(人工知能)の活躍が期待されています。私たちは肺腺癌の病理診断という分野で、AIが病理医を補助し、肺腺癌の患者さんの病理診断と、病理診断に基づく予後の予測を可能にすることを目指しています。開発されたAIエンジンを活用することで、たとえば病理医が不足している施設でも、肺腺癌の病理診断や、その後の治療方針の決定などを、他の施設と較差なく行えるようになると考えています。
② 研究対象者
1996年4月~2022年2月に筑波大学附属病院病理部で病理診断を受けた患者さんの内、病院で診療目的に採取された検体の研究利用のため、つくばヒト組織バイオバンクセンターでの試料・情報保管に同意を得られた患者さんが対象になります。
対象診療科:呼吸器外科
③ 研究期間:倫理審査委員会承認後~2027年(令和9年)3月31日
④ 研究の方法
病理診断のために、生検や手術によって採取された検体は、病理部にすべて提出されます。病理部では提出された検体をすべて病理医・病理検査技師が確認し、診断に必要な部分を判定して診断用の標本を作製しています。診断用に作成された標本とは別の部分から、本研究のために新たに病理標本を作成し、標本をスキャナーで取り込んでデジタル画像を作成します。デジタル画像上に、肺腺癌の診断を専門とする病理診断医がアノテーションという作業を行い、AIに肺腺癌の浸潤部として教育したい領域を指定します(教師材料の作成)。デジタル画像と教師材料をもとに、AIが機械学習を行い、今現在病理医が行っている病理診断をAIが再現できるようになるかどうかを検証していきます。
下記の共同研究機関に試料(デジタル画像)を提供し、解析しますが、提供するまえに全ての試料・情報は匿名加工されます。提供された試料、情報から、患者さん個人の情報が特定されることはありません。
◉ 解析内容 / 提供先の共同研究機関名(責任者)
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