「意識障害・運動障害に対する看護的アプローチ」


紙屋 克子 (筑波大・社会医学系)


 意識障害は脳性の一次障害の他に、循環器・呼吸器系疾患、代謝障害、各種の中毒症など、様々な原因によって生ずる。原疾患に対する積極的な治療にも関わらず、意識障害が遷延化した々者の効果的な治療と看護の方法については現在のところ、まだ十分な確立をみていない。
 伝統的な意識障害患者の看護は、患者自身が自らの生命と生活をコントロールする能力に欠けているところから長い間、生存および療養生活に不可欠な部分を全面的に補完するという方法で行われてきた。特に医学的に「意識の回復は極めて困難である」と判断された患者については、その看護活動も生命維持や身体機能の調整といった消極的なものにとどまる傾向があった。
 臨床看護の理念と第一義の機能は、患者が健康を回復し、よりよい状態で社会復帰できるように療養生活を支援することである。しかし、わが国の医療現場では、このような看護の機能が十分に理解されているとは思われない。
 本セミナーでは意識障害に対する最近の看護的アプローチについて紹介する。また、意識障害の看護プログラム開発の過程で、自発運動の促進に有効であったトランポリン運動が、パーキンソン患者の歩行改善にもみるべき効果があったので、事例を通して臨床看護の実践の現状と今後の方向性について報告する。


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