筑波大学 腎泌尿器外科・男性機能科

男性更年期障害(加齢男性性腺機能低下症候群:LOH症候群)

トップページ診療ご案内疾患説明検査説明治療成績


 筑波大学泌尿器科では、最近マスコミ等でも取り上げられている男性更年期障害に関する相談も行っております。最近では新しい事柄がわかって参りました。よく質問される項目(FAQ:Frequently Asked Question)とともに、付け加えました。

 最近だるい、疲れやすい、仕事に集中できない などの症状があり、自分が男性更年期障害かもしれない……そう思ったときは以下のチェックリストに記入してみてください。

男性の老化症状に関する質問票(Japanese version of the AMS Questionnaire)

現在、あなたにあてはまる以下の症状がありますか。あてはまる症状の程度に○をつけてください。
もしも、あてはまる症状がない場合は、「なし」の項に○をつけてください。(札幌医科大学 伊藤直樹 助教授の提供)

症 状 なし 軽い 中程度 重い 非常に重い
1. 総合的に調子が思わしくない
(健康状態、本人自身の感じ方)
1 2 3 4 5
2. 関節や筋肉の痛み
(腰痛、関節痛、 手足の痛み、背中の痛み)
1 2 3 4 5
3. ひどい発汗
(思いがけず突然汗が出る。緊張や運動とは関係なくほてる)
1 2 3 4 5
4. 睡眠の悩み
(寝つきが悪い、ぐっすり眠れない、寝起きが早く疲れがとれない、浅い睡眠、眠れない)
1 2 3 4 5
5. よく眠くなる、しばしば疲れを感じる 1 2 3 4 5
6. いらいらする
(当たり散らす、些細なことに直ぐ腹を立てる、不機嫌になる)
1 2 3 4 5
7. 神経質になった
(緊張しやすい、精神的に落ち着かない、じっとしていられない)
1 2 3 4 5
8. 不安感
(パニック状態になる)
1 2 3 4 5
9.からだの疲労や行動力の減退
(全般的な行動力の低下、活動の減少、余暇活動に興味がない、達成感がない、自分をせかせないと何もしない)
1 2 3 4 5
10. 筋力の低下 1 2 3 4 5
11. 憂うつな気分
(落ち込み、悲しみ、涙もろい、意欲がわかない、気分のむら、無用感)
1 2 3 4 5
12. 絶頂期は過ぎたと感じる 1 2 3 4 5
13. 力尽きた、どん底にいると感じる 1 2 3 4 5
14. ひげの伸びが遅くなった 1 2 3 4 5
15. 性的能力の衰え 1 2 3 4 5
16. 早朝勃起(朝立ち)の回数の減少 1 2 3 4 5
17. 性欲の低下
(セックスが楽しくない、性交の欲求がおきない)
1 2 3 4 5

症状の重症度の評価方法は17〜26点が「なし」、27〜36点が「軽度」、37〜49点が「中等度」、50点以上が「重症」となります。

よく質問される項目(FAQ:Frequently Asked Question)

Q1;自分の症状が男性更年期にあてはまるのかどうかわかりません。

A1:男性更年期障害は「加齢に伴う男性ホルモンの低下を特徴とする症状・所見からなる症候群」と定義されています。まず、上記の質問表を行ってみて、症状が当てはまるかどうかを確認してみてください。当てはまる項目が多い場合や、症状の重症度が「中等度」以上の場合は、受診をお勧めいたします。初診時に採血を行い、男性ホルモンの値を調べます。検査結果はおよそ1週間程度で出ます。

Q2;どういう治療法があるのでしょうか?

A2:現在のところ、男性ホルモンの注射による男性ホルモン補充療法が一般的です。内服薬もありますが、我が国で認められているものは、効果の不安定さや副作用の問題で使用できません。海外ではジェルや貼り薬、安全性の高い内服薬もありますが、我が国ではまだ認可されておりません。また、漢方薬、抗不安薬、勃起障害改善薬を使用することもございます。実際に患者様とお話をしていて感じるのは、お酒やタバコを控え、運動をする習慣を持つようになった方は体調が良くなり、更年期症状も改善する印象を持っています。そのようになれば、後述しますが、治療をしなくてもよくなるはずで、そのような状態に改善するまでのお手伝いができればというのが、当科の考えです。

Q3;治療を開始したらどのくらい通院すればよいのでしょうか?

A3:男性ホルモンが低値を示した方で、前立腺に病気がない方が治療の対象となります。2-3週間に1回通院していただき、男性ホルモン補充療法を行います。効果の表れかたは患者様によって様々ですが、典型的な方では注射直後より効果を実感されます。どのくらいで効果がわかるかは3回注射すればわかるという意見と、3ヶ月程度かかるという意見が、専門家の間でも分かれるところですが、当科では3回を一つの目安と考えております。また、いつまで通院するかと言うことですが、治療後3ヶ月、6ヶ月の時点で症状の改善度、副作用の程度、患者様の社会的・心理的な環境およびご希望を考慮して、治療を続けるかどうかをご相談いたします。当科の経験では、治療開始後半年も経つと、環境や生活習慣の変化により、ホルモン補充療法をしなくても良くなる方が半数以上いらっしゃいます。

Q4;この病気は治るのでしょうか?

A4:何を判断基準とするかによるとは思いますが、A3でも述べましたように、ホルモン補充療法をしなくても社会生活上、特に問題を感じないという状態になれば、その時の男性ホルモンの値に関わらず、治療は中断できるかと思います。実際にストレスが改善し、生活習慣を変化させた後に男性ホルモンの基礎値が上昇した患者様もいらっしゃいますので、当科としては注射だけに頼らない治療を目指していきたいと考えております。

Q5;治療の副作用はありますか?

A5:まず、初めにお断りしておきたいのは、お子さまをつくる予定のある方にはホルモン補充療法は精子の形成を妨げる作用があるのでお勧めできないということです。この治療をしている最中は、精子はとても少なくなります。(しかしながら、中止後に精子数が元の値以上に回復した患者様もいらっしゃいますので、絶対的な禁忌ではありませんが)。その他に考えられる副作用としては、前立腺癌、前立腺肥大症、女性化乳房、肝機能障害、睡眠時無呼吸、多血症、浮腫などが挙げられます。当科で経験したのは、多血症と浮腫がそれぞれ1例のみで、治療中断後、すみやかに改善されました。

Q6;前立腺癌になった人はいますか?

A6:動物実験などで男性ホルモンの影響により前立腺癌が形成されたという報告がありますが、盛んに治療されている海外の報告をみてもこの治療で前立腺癌になったと証明されている報告例はありませんし、勿論我が国でもそのような報告はありません。この理由は、治療に携わる医師が、治療前に必ず前立腺癌の可能性について調べ、治療中も厳重に採血などで様子をみているからです。

Q7;現在、うつ病で通院中ですが、なかなか良くなりません。自分では男性更年期ではないかと思っているのですが….

A7:最近わかってきたことですが、男性更年期外来を受診する患者様の半数以上にうつ病を認めました。男性更年期障害の症状は様々ですが、うつ病の症状もかなり重複することや、精神科や心療内科にかかるのは抵抗がある方がいらっしゃることが、その一因かと思われます。また、既に精神科で投薬を受けているにも関わらず良くならないといって来る患者さんも多くおられます。初診時に質問票に答えていただき、男性ホルモンを測定することにより診断が可能ですので、一度相談しにいらっしゃって頂ければと思います。当科でも両方の科にかかり治療を継続されている方もいらっしゃいますし、精神科・泌尿器科が互いに連携し、患者さんを紹介しあい、患者さんにとって最も良い治療を行っていきたいというのが当科の考えです。