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平成20-22年度 大学院教育改革支援プログラム
  「個性とキャリアを繋ぐ医科学教育ルネサンス」 ホーム事業代表者からのメッセージ


ホーム・セクションチーフ  筑波大学大学院医学系専攻は、医学系博士課程専攻に入学する学生の30%以上が医学部
以外の卒業生であるという特徴をもちます。この環境は、医学、医科学、薬学、生物学、
化学など多様な学問的基礎をもつ学生達が、お互いに切磋琢磨し、議論し、協力しあって
新たな課題に立ち向かう得難い優れた環境といえます。今後は、ここに留学生の大幅な増
加が見込まれ、この状況はいっそう複雑なものになると予測されます。
 現在、精力的に進めている大学院教育改革は、この多様な学生に対応する教育システム
を整理し、コース化して、コースごとに人材養成の目的を明確化し、目的に応じた学修課
程の組織的展開と学生支援システムの構築を行うことにあります。
 さらに、私達医学系博士2専攻の教育課程の特徴のひとつは、私達が2005年から始め
ている『武者修行教育』にあります。これは、フィンランドが教育最先進国となり、カナ
ダのマックマスター大学やアメリカのハーバード大学から世界に広まった医学教育改革の
基盤精神にも共通している能動的学習課程の大学院版と考えられるものです。大学院にお
いては、研究活動を学生が能動的に行うことはこれまでも普通のこととして行われてきま
したが、専攻を単位とする教育の組織的展開の中で、能動的学修体制の確立を最重要課題
のひとつと捉えて、教育課程の再編に向かったのは私達の独自の方針です。『実質化』と『国際的通用性・信頼性』というふたつの
キーワードが大変重要であることに私達も異論はありません。これらに加える私達の教育課程の特徴を示すキーワードが『武者修行』
なのです。近年、博士課程を修了した人達に対して、
 ・専門には詳しいが応用がきかない
 ・自分で研究をデザイン、マネジメントできない
 ・関連領域に関する知識が少ない
 ・語学力も含めて、コミュニケーション能力に欠ける
 ・アカデミック志向が強い
等の課題が指摘されています。私達は、『実質化』と『国際的通用性・信頼性』に加え、自ら課題を設定し、指導教員のみならず、
外国の大学院生等との交渉や、企業の方との交渉を通じて、その達成のための活動を行う『武者修行』型能動学修こそ大学院修了
生に対する高い期待に沿う人材を育成する最善の方法だと考えています。ある意味で、『武者修行』型学修は、学修内容と評価基
準を事前に提示し、それに従って教育を行う『実質化』とは対局に位置する改革かもしれません。しかし、見通しの良いレールの
上を走る標準コアだけでは大学院生に求められている課題を克服できるとは思えません。学生も教員もそれぞれの課題をもって困
難を恐れず立ち向かっていく『武者修行』こそ、私達の最大の特徴だと考えます。(私達の専攻では、学生のみならず教員も『武
者修行』継続中なのです。)

1. 医学系博士課程2専攻共通科目群:メディカルリテラシー
 1) イニシエーションセミナーの新設
イニシエーションセミナーは単なる専攻やコースのガイドではなく、臨床医療活動を行う分野と行わない分野で分けられている専
攻(縦糸)と個々の学生のキャリアパスを元に設計されたコース(横糸)の概要を理解し、医学系博士課程修了者に対する社会の
ニーズを正しく理解し、自らの進むべき道を一旦定めるとともに(後に再考する機会がある)、他の道の意義を認め、自分の立ち
位置を明確にすることで、他者との恊働の精神を養うことにあります。

 2) その他の新設科目群
イニシエーションセミナー以外にもメディカルコミュニケーション演習や国際実践医学研究特論などの国際化推進に寄与する科目
や教育経験を積む医科学教育実習も新設されました。これらと既存の必修共通科目である医学研究概論、医学セミナー、医学特別
演習、医学特殊研究、各専攻の医学概論ならびに各学生が選択した分野で行われる特論、演習、実験実習により、科目学修の根幹
が形成されています。

2, 個性とキャリアを繋ぐ3コースの新設
 2専攻共通で3つのコースを新設しました。それらの概要は以下のとおりです。
 ◇ インテンシブ・リサーチコース
  アカデミックポジションを目指した研究志向型人材の育成
 ◇ クリニカル・リサーチコース
  橋渡し研究を推進できる専門医/医療人の育成
 ◇ パブリック・リサーチコース
  国際恊働型医療人や医学/医療の知識をもって社会ニーズに対応できる人材(医系公務員、コミュニケーターなど)の育成
また、それぞれのコースに則した学生支援のあり方として、ティーチングフェロー制度(インテンシブ・リサーチコース)、クリ
ニカルリサーチアシスタント制度(クリニカル・リサーチコース)、オーガナイザー制度(パブリック・リサーチコース)を新設
しました。

3. 博士(医学)と修士(公衆衛生学)のデュアルディグリープログラム
 臨床医学の知識・技能と公衆衛生学の知識・研究手法を兼ね備え、統計学的手法を駆使して臨床医学研究の発展に貢献する臨床
医学研究者と保健行政機関や医療機関において公衆衛生の向上や地域住民の健康管理に貢献する医師を育成することを目的として、
つくられたプログラムです。国際的に重要な意味をもつMD, PhDとMPHを合わせもって、国際的に活躍する医療人と我が国にもこ
のデュアルディグリーの意義を定着させるような制度を構築する真のリーダーの育成を目指しています。

4. 大学院教育企画評価室の新設
 我が国の国立大学は、法人化とともに各大学の個性化・特色化に伴う教育の多様性と国際的通用性等の観点から要請される教育
の標準性の調和に配慮しながら、専攻ごとに、どのような人材を養成するのかその目的を明らかにし、人材養成の目的に即した教
育課程を編成し、学修の成果及び学位論文に係る評価ならびに修了認定の基準を定め、あらかじめ明示することが求められています。
このような要求に答えるべく、私達は、大学院教育に関する企画、評価、教員のFD活動などを行う大学院教育企画評価室を新設し
ました。もちろん、この『個性とキャリアを繋ぐ医科学教育ルネサンス』も大学院教育企画評価室が中心となって運営委員会を構
成しています。


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 責任総括 加藤 光保