学外学修実施報告書:伊藤嘉朗
コース名:Advanced Skull Base Microanatomy & Hands-on Dissection Workshop
開催時期:September 17-20, 2011
会場:Palm Beach Gardens, FL, USA
研究機関:International Neurosurgery Education & Research Foundation
代表者:Takanori Fukushima
Anspach skull base workshop参加報告
1)目的
頭蓋底外科などの困難な脳神経外科治療を必要とする患者に対して、最近は放射線治療や脳神経血管内治療の進歩によって、手術を経験する機会が減少している。手術トレーニングの一環として献体頭部を使用したトレーニングコースがあるが、現在の日本ではその数はきわめて少なく、参加自体も難しくなっている。今回のワークショップは頭蓋底外科の手術解剖を学習することができるため参加した。
2)ワークショップ概要
開催場所はアメリカフロリダ州のパームビーチガーデンにあるSynthes Anspach内にある実験室にて行われた。このワークショップは1995年から行われており、現在は年3回行われておりいる。今回の参加者は30名でうち3名が特別講師であった。午前と午後それぞれ教科書を使用してミニレクチャーののち、献体頭部による手術解剖を学習する。献体頭部は2名につき1体であった。使用する機材はほぼ実際の手術で使用するものと同様のものを使用した。実際の手術同様に皮膚切開を行い、頭蓋底周囲の手術アプローチを学習する。全参加者は実験室から近いホテルに宿泊した。
3)献体頭部
献体から頭部で切断されたものを使用した。アメリカでは死亡後に遺体を手術解剖トレーニング用に利用できるビジネスがあり、アルコールとホルマリンの特殊な混合溶液に浸し、動脈には赤い、静脈には青い色素が注入されていた。
4)考察
これまでにも国内で同様のワークショップに参加したことはあり、筑波大学でも以前は学内関係者のみでワークショップが行われていたこともあった(今年は非開催)。国内ではホルマリン固定の頭部を使用するため、脳組織の硬さや血管自体も動静脈の識別は困難である。今回の検体はかなり実際の脳組織に近い脳の柔らかさであり、血管自体も識別可能な状態であったため、非常に臨場感があった。また2名に1検体であるため(国内では3-6名に1体)、実際にトレーニングを行っている時間は十分にとることができた。費用も3日間で教科書をふくめて1800ドル(教科書は550ドル)であり、国内では2日間で10万円前後であることを考えると費用対効果は高いものと思われる。
学生時代に解剖実習は行われるが、実際の手術解剖とは全く異なっている。教科書も多く出されているものの、立体的に把握することは難しく、また経験によっても新たに疑問点は出てくるため、繰り返しトレーニングを行っていく必要があることを痛感した。
またこの参加した医師はある程度の出費を惜しまない熱意がある医師ばかりであり、多くの刺激を受けることができた。
日本では手術解剖を目的としたトレーニングコースは残念ながらまだ十分な環境が整っていない。国内でも同様の質のトレーニングコースが行われることを期待したい。
(学外学修レポートより)
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