運動×意志
随意運動の制御機構
私たちはなぜ思うままに行動することが出来るのでしょうか?
当研究室ではこれまでに様々な行動課題を用いて、運動のタイミングや、抑制を伴った運動、状況に依存した行動選択などについて研究を行い、これらの行動の制御に大脳皮質下にある大脳基底核や小脳がどのように関与しているのかを明らかにしてきました。
最近では、ヒトにとって特別な随意運動だと考えられる発語に注目し、それを制御する神経メカニズムを調べています。
関連研究:Kunimatsu et al., 2021, PNAS
私たちは状況に従って適したものを選択することができるがその脳メカニズムはよくわかってません。
本研究では、脳の深部にある「線条体尾部」の神経活動記録と薬理実験によって、同部で背景情報と物体の価値情報が統合されることを発見しました。
介在ニューロンの働きによって異なった背景ごとに物の価値が学習されるという、これまで知られていなかったメカニズムの存在を見出しました。
協奏×コミュニケーション
社会性の基盤となる神経回路
私たちは自然に他者に共感し社会性が生まれてきます。
これはどのような神経メカニズムによるのでしょうか?これまで当研究室では、「顔」と「その人に対する親しみ」が線条体尾部と呼ばれる大脳基底核の一部で紐づけてられていることを明らかにしました。
最近では、呼吸などの無意識的な同期が共感や社会性の基盤となっていると考えてその神経メカニズムを研究しています。
また、音楽演奏会の演奏者や観客の共感性についても研究を行っています(東京大学、NTTなどとの共同研究)。
関連研究:Kunimatsu et al., 2024, iScience
線条体が物体と報酬の連合学習に重要な役割を務めていることは知られていますが、それが複雑な社会的な状況でも機能しているかは不明でした。
そこで本研究では、サルに、親しい人と親しくない人の顔写真を見せ、その際の線条体尾部の神経活動を記録することによって、「物体の価値」と「親しい人の顔」を脳が同じメカニズムで学習していることを明らかにしました。この結果は、これまで調べられてきた比較的シンプルな脳機能によって複雑な社会性行動が作られていることを示唆しています。
猿×人×呼吸
呼吸が認知機能に与える影響
スポーツ選手が大切な場面で「息を整える」ように、私たちは呼吸を操作することで無意識に感覚を研ぎ澄ましているのかもしれません。
呼吸による情報処理のゆらぎが、運動の制御や感覚認知に与える影響とそのメカニズムを解明することを目指します。
これまでの研究の結果、呼吸と認知機能のいろいろな関係を見出しています。
関連研究:Kunimatsu et al., 2022, eNeuro
これまで覚醒下のマカクザルから呼吸を記録する方法は確立されていませんでした。
本研究では、温度センサーを外鼻孔に設置して、呼気と吸気による温度変化を計測することで呼吸を長時間にわたり安定してモニターする方法を作成しました。