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筑波大学

大学院生募集Recruitment

トップページ大学院生募集エッセイ(有野雄大さん)

修了生によるショートエッセイ

学際的に学び、研究するということ
有野雄大
(2023年度博士修了)
(法務省東京拘置所)

 私は、保護観察官という、犯罪をした人や非行のある少年を地域で指導したり支援したりする仕事をしてきました。その対象となる犯罪類型は、財産犯、生命・身体犯、性犯罪、薬物犯罪、交通犯罪など多岐にわたります。対象となる人の年齢も、10代の少年から90代の高齢者まで非常に幅があります。そのような人に対して、個別面接によって、再犯・再非行のリスクや支援のニーズをアセスメントし、その人が抱える問題や生活上の課題に応じて必要な指導や助言を行います。一部の犯罪類型については、認知行動療法を基礎理論とする専門的処遇プログラムを個別又は集団で行います。他機関や団体による支援を必要とする場合は、関係機関・団体と連絡調整を行い、リファーしたりケア会議を開催したりします。

 このような営みは、臨床心理学の知識や技術はもとより、犯罪心理学、犯罪社会学や社会病理学、発達心理学、家族心理学、精神保健学、司法福祉学や社会福祉学、そして法学など、様々な学術的知見によって支えられています。

 私は、違法薬物を使用した人の指導や支援をする機会が多かったこともあり、「薬物事犯保護観察対象者に対する保護観察官の回復志向性に関する研究」をテーマに、保護観察官に対してインタビュー調査や質問紙調査を行い、博士論文を執筆しました。保護観察の実務と同じく、博士論文も、犯罪心理学や精神保健学を主として、多くの学術的知見に裏付けられています。まさに学際的な研究を行うことができたといえます。

 ところで、私は、大学では法学を専攻し、犯罪学や刑事政策を学ぶゼミに所属していました。その後、法務省に入省し、11年目に大学院の修士課程に入学しました。そこでは、発達心理学を中心に、幅広く心理学について学び、その知識をいかして修士論文を執筆しました。そして、引き続き大学院博士課程に進学し、社会精神保健学研究室に在籍しました。また、仕事をしながら、精神保健福祉士、公認心理師、社会福祉士の国家資格も取得しました。

 私はときどき考えます。「はて、私の専門は何だろうか?」と。保護観察官という仕事をする上で、また、研究をする上で、「これが自分の専門である」と主張できるものはありません。あえて言うならば、仕事も研究も、「学際的である」ということが、私の強みなのかもしれません。

 そのような懐の広い研究室で、あなたも学び、研究してみませんか?