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筑波大学

大学院生募集Recruitment

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修了生によるショートエッセイ

そうだ、筑波に行こう!
道重さおり
(2020年度博士修了)

 私が博士課程への進学を志したのは,刑務所の心理職として働く中でアルコールの問題を抱える受刑者のグループワークを担当するようになり,依存症とは?罪を償うとは?という壮大な課題に直面したからです。刑務所で何をやっても変わらないのだから,とりあえず罪名に関するグループワークを受けさせれば良いという意見を持つ人もいましたし,刑務所だからこそアルコールの問題に向き合うきっかけになる働き掛けをという思いを共有できる仲間もいました。けれども,どのような取り組みが効果的であるのか?そもそも効果とは何をもって効果があるというのか?受刑者は別に求めていないよね?等々,容易に答えがでるような問題ではなく悶々と過ごす日々がしばらく続きました。そうした中でも自分なりに同じようなテーマで研究されている先生方の論文を探し,森田先生の論文に出会い,実務を通して感じる課題を研究したいと強く思うようになりました。もともと,思い立ったら即行動するタイプですので,決めてから迷うことはありませんでした。先生方とは全く面識もありませんし,筑波には縁もゆかりもありませんでしたが,オープンキャンパスに申込み神戸から筑波へ向かいました。

 いざオープンキャンパスに行ってみると,先生方が研究室で直接話を聞いてくれました。アウェーに乗り込む気持ちだった私は,すっかり研究室の雰囲気に魅了され,大学院入試までの数か月必死で勉強しました。入学してからは,長距離通学に心が折れそうになりましたが,北は新潟,南は沖縄,そして海外からの留学生の皆さん!私よりも遠い場所から研究するために筑波に集った仲間がいることに勇気づけられ,幾度となく神戸と筑波を往復しました。また,コロナ禍で普及したオンライン授業ですが,私が在学中は稀なことでした。しかし,仕事の都合によりどうしても筑波に出向けない時は,オンラインでゼミに参加することができました。学ぶ機会を失わずに過ごせたことに今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

 先生方の配慮もありオンラインを活用して何とかゼミに参加していた私ですが,そこまでしてでもゼミに出たいと思ったのは,先生方の指導は,的確であり信念を感じるものだったからです。コメントのひとつひとつが研究の方向性(時には根本)に関連する重要なものでした。自分の研究だけでなく,研究室の仲間の発表やそれに対する先生方のコメントを聞くことも,自分の研究に新たな視点を取り入れる貴重な機会でした。そうした機会を通して,私はひとつの世界に長年いるうちに,自分でも気づかず凝り固まった思考に至っていたことに気づかされ,研究者として,また臨床家としての姿勢を改めて学ばせていただく機会を筑波で得ることができました。

 仕事と研究そして出産・子育てと常にキャパオーバーな状態で,全てが中途半端な気がして自信を無くす時も多々ありましたが,研究室の仲間から刺激を受け,周囲に助けられ,博士号を取得することができました。修了式では,ヒューマン・ケア科学専攻の代表として修了証書を受け取る役目をいただきました。筑波での奮闘の日々に『頑張ったで賞』をいただいたように感じ,諦めることなく研究を続けて良かったと感慨深かったです。

 研究室には,国籍も研究分野も職種も違う様々なバックグラウンドを持つ仲間が集っています。それだけで刺激的です。また,根気強く指導してくださる先生方もいます。博士課程への進学を迷っている方,ぜひ1歩を踏み出してください。そこには,新しい世界があり,人生を豊かにしてくれる学びがあります。